「年金75歳まで繰り下げ」で約2倍になるが…安易な判断は危険。本当に“年金額が最大になる”繰り下げタイミングは?【元国税専門官が警告】
年金額が最大になる「繰り下げタイミング」
そこで参考になるのが、厚生労働省の「簡易生命表の概況」に記載の日本人の平均余命。 平均余命とは、ある年齢の時点で、あと何年生きられるかを示すものです。令和3年簡易生命表によれば、65歳時の平均余命は男性が19.85年、女性が34.73年。ということは、男性は85歳、女性は90歳くらいまで生きる可能性が高いと考えられます。 このように亡くなる年齢を仮定すると、どれくらいの時期に年金の受給開始時期を設定すればいいか、ざっくりと見えてきます。65歳時の年金額を100%とした場合、男性は85歳0ヵ月、女性は90歳0ヵ月まで生きると仮定して、最適な受給開始時期を計算すると、次の結果が出ました。 ◆65歳時の平均余命まで生きた際に、年金総額が最大となる受給開始時期 ・男性(85歳0ヵ月まで生きると仮定):69歳1ヵ月まで繰り下げ ・女性(90歳0ヵ月まで生きると仮定):71歳7ヵ月まで繰り下げ 日本は長寿大国で、老後の期間は短くありません。そう考えると、年金は繰り上げるよりも繰り下げたほうがいいと考えられます。 とくに夫婦であれば、共に繰り下げを行うとそれぞれの年金がアップするのでメリットが倍増します。これが難しい場合でも、夫婦の一方は65歳で年金を受け取りつつ、もう一方はギリギリまで繰り下げるといった形も取れます。 もしも年金の繰り下げを行っているときに何かしらの事情でお金が不足したときは、年金を最大5年分さかのぼって一括で受け取れます。ただし、繰り下げ分の加算はリセット。たとえば68歳のときに過去3年分(65~68歳まで)の年金を一括で受け取ると、その後は65歳時点の年金額を受け取ることになります。 なお、繰り上げ、つまり早く年金を受け取ると、年金が減るデメリットに加えて、障害基礎年金を受け取れなくなる点に注意してください。障害基礎年金をもらえるのは原則「65歳未満」ですが、繰り上げ受給をすると「65歳に達した」という扱いになり、たとえ実際には65歳未満でも障害基礎年金は不支給となるのです。
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