中日・春の珍事か? 実力の証明か? 今年は違うぞドラゴンズ!
新戦力の躍動
チーム最大の課題だった得点力不足は、一人の男の加入によって劇的に変わった。四番に座る中田翔だ。開幕カードの2本塁打は勝利につながらなかったものの、ここぞの場面で勝負強さを発揮し、5試合連続打点などで打線をけん引。追い込まれてからはフルスイングをせず、軽打を狙う打撃に切り替えている。バットだけではない。一塁守備にはもともと定評があるが、苦手の走塁でチームの士気を高めている。4月12日の阪神戦(バンテリン)では4回無死一、三塁で三ゴロ。併殺でも1点入るが、一塁まで全力疾走したあとに転倒。二死走者なしを一死一塁としたが、これまでの中田なら併殺を受け入れていただろう。チームに得点が入れば手をたたいて喜び、攻守走とすべての面で存在感を発揮している。
さらに2年目の田中幹也が二番・二塁で強い輝きを放っている。忍者のようなすばしっこさで守っては安打をアウトに、打っては単打を二塁打に変えている。得点力不足と同様に懸念されていた二遊間問題、その一つを解消する活躍。また開幕から三塁を守る高橋周平の復活も見逃せない(※右外側ヒラメ筋損傷にて17日に出場選手登録抹消。治療に専念して、早期復帰を目指す)。オフはトレード要員候補とも言われた“ミスター・ドラゴンズ”が三番に座り、中田、細川にいい形でつないでいる。特に守備での貢献は大きく、二塁の田中、一塁の中田とともに守り勝つ野球ができているのも好調の要因だろう。
4月10日のDeNA戦(横浜)は15安打すべてが単打、うち内野安打が6本。逆転勝利を飾った同13日の阪神戦(バンテリン)も10安打すべてが単打で勝利を飾った。長打は少ないが、打線につながりが生まれ、昨年までは出なかった「あと1本」が飛び出すようになった。それはチーム打撃を見せている“中田効果”でもあるだろう。 さらに上がり目を感じるのは、まだファームで出番を待っている戦力があることだ。竜の安打製造機でもある岡林勇希は右肩の故障から間もなく戻って来るはず。昨年はチームトップの85試合で四番に座った石川昂弥も大きな戦力。投手では高橋宏斗もいずれ一軍マウンドに立つ立場だ。開幕前に故障となった“便利屋”の藤嶋健人もスタンバイ。今年から日本選手扱いになったビシエド、新助っ人のアレックス・ディカーソンも控え、層の厚さは昨年とは比べものにならない。彼らが不在でも首位を走る現状が何とも頼もしい。この強さ、しばらく続くのではないか。 『週刊ベースボール』2024年4月29日号(4月17日発売)より
週刊ベースボール