「信頼回復が最優先の課題、業界全体で法令順守や社員・代理店教育を徹底していく」…日本損害保険協会・城田宏明会長
中古車販売大手ビッグモーターによる保険金の不正請求と企業向け保険における大手4社の事前調整問題。損害保険は、身の回りに起きた事故や損害をカバーする身近な存在にもかかわらず、信用を裏切る不祥事が相次いでいる。日本損害保険協会の新しい会長に就任した城田宏明氏(東京海上日動火災保険社長)に話を聞いた。(聞き手・橋爪新拓)
ガイドライン策定など四つの取り組み
――会長に就任した抱負を。
「お客様や社会から失った信頼を回復させるための取り組みを最優先の課題として進めていきたい。保険金の不正請求や調整行為で信頼を大きく損なった。業界全体で法令順守や社員、代理店教育の徹底、保険料の基盤を支える業務品質の確保が急務になっていると認識している。
社会の常識と業界慣行のずれを再認識し、業務品質を向上させ、健全な競争環境を実現したい。信頼回復の取り組みを進めるために、協会に業務抜本改革推進プロジェクトチームを設置した。不適切な事案を再発させないガイドライン(指針)を策定し、会員各社に展開させる。
金融庁の有識者会議による報告書をしっかりと確認し、検討を深めていく必要がある」
――具体的な取り組みは。
「四つの取り組みを進めたい。一つがガイドラインの策定。本業支援では、会員各社の理解にばらつきが生じないよう、便宜供与の類型や過度な本業協力の過度とはどんなことといった具体例を示したい。
二つ目は、代理店募集の業務品質の向上だ。業務品質を評価する基準をつくる。募集人の教育資格制度の改善、充実を図る。実効的、持続可能な仕組みになるよう、金融庁とも連携し、有識者の意見を踏まえて検討を重ねる。
三つ目は、理解の促進。保険本来の価値やリスクマネジメントに関する情報を十分に提供できていなかった。反省の声が上がっていることもあり、顧客企業の保険やリスク管理に対する情報を業界全体で提供するために支援する、業界共通のツールを作りたい。関連するセミナーも開く予定だ。