明日ド軍PO初先発。考え悩んだダルビッシュ有が集大成のマウンドへ
このままいけばドジャースは、プレーオフの先発ローテーションを再考しなければならないのではないかーー。 そんな声も聞かれ始めた中で迎えたのが13日のジャイアンツ戦。この日ダルビッシュは制球が安定し、7回を3安打、無失点。白星は、およそ1ヶ月ぶりだった。 ようやく手応えを掴んだのかーー。 試合後、「1点だけ、意識するポイントがあって、そこを意識するだけで投げていた」と話したダルビッシュ。こんな経緯があったと明かしたのは、9月25日の試合後だった。 「自分で動きの(中で)、昔出来てて、今出来ていないところを自分で見つけられた。それをするにはどうしたら良いかってことを考え出してから、それがジャイアンツ戦の前の日だったんですけど、それが見事に・・・多分それだったので、そっからそれしか考えなくていい、という状態に(なった)」 昔の引き出しをいろいろ開けてみた。するとそこに答えがあった。具体的な言及は避けたが、過去の経験値がものを言った。 ただそうなると、8月中旬からの取り組みは何だったのか。そこをどう捉えるのか。そんな問いかけに、ダルビッシュは「考えることをしてなかったら、そこにはいってない」と答えて、続けた。 「いろんなことをやって、それでもまだしっくり来てなかったので、まあそれで、これなんじゃないか、これを試してみる価値はあるということで、ぶっつけ本番でジャイアンツ戦に行って、それがうまくはまった」 それを聞いて、かつてイチローが、こんな話をしたことを思い出した。 2004年4月、イチローはチームから、初球打ちを自粛するよう求められた。「もっとボールを見ていけ」と。しかし、結果が出なかったことで、チームはそれを撤回した。その後の安打量産は知られる通り。 10月、ジョージ・シスラーが保持していた大リーグの年間最多安打を更新したが、その時のことをイチローは、「僕にとっていい経験だったと思ってます」と振り返っている。 「決して無駄なことではないですし、野球っていうのは、無駄なことを考えて、無駄なことをしないと伸びない面もありますから」 おそらく、ダルビッシュにとっても回り道は無駄ではなかった。もちろん、シーズン終盤という時期を考えれば、 一直線に答えに辿りついていたほうが、首脳陣を安心させられたのかもしれない。それでも回り道をしたことで、今の自分にとって必要なものよりむしろ、必要でないものを知った。将来を見据えた時、また、引き出しが増えたのではないか。 改めて全体を俯瞰すると、意識した1点とはなんだったのか、というところへ行き着くが、その答えはプレーオフを通して見えてくるのかもしれない。ダルビッシュは9日(日本時間10日)、敵地で行われるダイヤモンドバックスとのナ・リーグ地区シリーズ第3戦に先発する。 (文責・丹羽政善/米国在住スポーツライター)