経験ない暴風「怖かった」 台風常襲地もおびえた 牙むく〝最強〟台風10号、家屋や巨木をなぎ倒す 鹿児島県内、長引く影響懸念
「経験したことのない風の強さだった」「怖かった」。29日、過去最強クラスの勢力で北上し、薩摩川内市に上陸した台風10号。暴風が牙をむき、県内各地で空き家の倒壊や倒木が相次いだ。道路は寸断され、広い範囲で停電に見舞われた。県民は今後の生活への影響を懸念した。 【写真】〈関連〉落石でふさがれた林道=29日午後2時すぎ、霧島市国分川原
海に近い枕崎市旭町では、木造の空き家が倒壊。近くに住む男性(68)は「もともと風が強い地域だが、これまでに経験したことがない強さだった」と驚いた。 薩摩川内市の菅原神社では、境内の高さ約20メートルの木が根こそぎ倒れた。近くの男性(92)は「あんなに大きい木が倒れるとは。吹き荒れる暴風の中、バリッと大きな音がして怖かった」と振り返った。 2年ぶりに特別警報が出された。県によると、市町村が設置した避難所には延べ9775人が身を寄せた。「サンアリーナせんだい」で一夜を過ごした同市宮内町の西冨イツエさん(80)は「強い台風と聞き、命が一番大事だと思った。知人もおり、安心して過ごせた」。 出水市高尾野の農業横峯均さん(75)は28日に息子らと台風に備え、ハウス10棟のビニールを急いで外した。「今回の台風は危ないと思った。大きな被害はなくほっとした」と胸をなで下ろした。 県内では最大、総戸数の約2割が停電した。錦江町馬場の半下石良子さん(70)宅では28日夕から電気が使えなかった。「断水をしている家もあり、長引かないか心配」と不安を口にした。
大雨を伴い浸水被害も相次いだ。南さつま市加世田内山田の井田満さん(44)宅では突風で窓ガラスが割れ、さらに側溝からの水で床下約30センチまで泥水が入った。「片付けはまだまだかかりそう」。びっしょりと汗をかき、清掃に追われていた。 県教育委員会によると、離島を中心に小中学校各1校、県立高5校で被害が出た。喜界高校のナイター照明や喜界中の渡り廊下の屋根が壊れるなどした。
南日本新聞 | 鹿児島