<リオ五輪速報>伊調が4連覇の偉業 「(天国の)母が助けてくれた」
女子レスリングのフリースタイル、58kg級の決勝が17日(日本時間18日)、現地で行われ、伊調馨(32、ALSOK)がワレリア・コブロワゾロボワ(23、ロシア)を逆転で下して女子個人競技では全競技を通じて史上初となる4大会連続の金メダルを獲得した。男子では、走り幅跳びのカール・ルイスと、円盤投げのアル・オーター、今大会で競泳のマイケル・フェルプス(いずれも米国)の3人が4連覇を成し遂げている。 決勝の相手は、2014年世界選手権の銀メダリスト。かつて吉田沙保里に土をつけたこともある選手だ。 第1ピリオド、伊調は慎重なスタート。1分23秒、相手に口頭注意が2ついき、アクティビティタイムとなったが、伊調がこれを封じて1ポイントを先制した。だが、第1ピリオドの終了間際にタックルをはずされ、逆に足をとられてバックを許し1-2と逆転されて第2ピリオドへ。 伊調は片足タックルを仕掛けられたが、なんとかこらえた。さらにタックルで攻められたが、粘りながら残り3秒で足を抜きバックを取って逆転、3-2の僅差で金メダルを獲得した。 伊調は、1回戦でマルワ・アムリ(チュニジア)と対戦、第1ピリオドに相手のミスから1ポイントをもらうと、片足タックルからバックをとり、2ポイントを追加。第2ピリオドは、相手の攻撃をさばきカウンターからバックをとり2ポイント。そこからは得意の寝技でポイントを積み重ねて11-0でテクニカルフォールで突破。 続く準々決勝は、2年連続世界選手権銅メダルのエリフジャレ・エシリルマク (トルコ)が相手。伊調は、第1ピリオドで消極姿勢からパッシブ(口頭注意)を受け、30秒のアクティビティタイムでポイントをとれずに、相手に先制ポイントを許す。だが、終了間際にがぶりからタックル、そのままバックを取って2ポイントを奪い逆転。第2ピリオドでは、相手のアクティビティタイムを封じて3-1。 僅差で逃げ切り準決勝では、ロンドン五輪55kg級の銅メダリストのユリア・ラトケビッチ(アゼルバイジャン)を開始早々から片足タックルからバックをとり2ポイントを先制。さらに伊調は攻め続けて、第1ピリオドに10-0でテクニカルフォール勝ち。体力を温存して決勝進出を決めていた。 伊調は、今年2月のヤリギン国際の決勝で、オホン・プレブドルジ(モンゴル)に13年ぶりに黒星を喫して連勝が189でストップしていた。この大会の前後で首を痛め、その後も回復に苦しんできた。32歳。相手に研究され、自らの故障をも乗り越えての4連覇の偉業だった。 試合後、伊調は涙ぐみながらインタビューに答えた。 「内容があまりよくなかったんですが、こうやって、たくさんの人に喜んでいただいて……もっといい試合をしたかったです。(最後は逆転?)相手がタックルに入ってくれたので、最後のチャンスだと思って、ここしかないと思って取りにいったんですけど、取れてよかったです。(家族が見守ってくれました?)最後は、(亡くなった)お母さんが、助けてくれたと思います」 観客席では、父とアテネ、北京五輪銀メダリストの姉・千春さんが2014年11月に65歳で天国へ旅立った母のトシ子さんの遺影をもって応援をしてくれていた。「勝負ごとは死んでも勝たなければダメよ」。母にいつもそう言われていた。残り3秒の奇跡。天国の母が力を与えてくれたのかもしれない。