Vシネマの真骨頂!「OZAWA」監督の下で哀川翔と小沢仁志が輝き放つ「龍虎兄弟」
Vシネマと聞いて食わず嫌いしてしまう人は少なくないだろう。しかし、Vシネマでしか得られない味わいも間違いなくある。それを明確に示しているのが、Vシネマの帝王こと小沢仁志がメガホンを取った「龍虎兄弟」だ。 【写真を見る】「龍虎兄弟」より 小沢仁志が「OZAWA」として監督・共同脚本を担当する中、主演を務めたのは小沢同様、Vシネマ界を牽引してきた哀川翔だ。同作品内で2人は兄弟を演じ、昇り龍を腕に抱える兄・昇役を哀川、猛虎を腕に彫る弟・猛役を小沢が務めた。 中国出身の龍虎兄弟だが、日本の漢民街でヤクザとして生き、武田組の組長から組を継ぐよう言い渡される。しかし、この決定に納得のいかない勢力との血なまぐさい権力争いが勃発する。 物語の主軸として据えられているのは間違いなく「復讐」だ。竹田組の組長が兄弟2人の父である王海東を殺すが、2人は暴力で人々を苦しめた父親よりも竹田に恩義を感じていた。しかし、龍虎兄弟の腹違いの弟である王烈が反発。父に愛されなかった王烈は2人の兄に強烈な恨みを持っていたのだった。そのため、猛虎兄弟と相容れない関係であった組の若頭と手を組み、兄弟に対して容赦のない仕打ちを行っていく。 圧倒的なバイオレンスにより、2人は腕を失い、弟・猛は足を失い、ともに大事な人を亡くす。これ以上ないほどの悲しみに突き落とされてから、2人の逆襲が始まる。 同作品において「復讐からは何も生まれない」なんて通り一遍の言葉は全くもってナンセンスだ。監督であるOZAWAがかっこいいと信じたものをただひたすらにスクリーンに映し出し、物語は展開していく。20年以上前の作品ということもあり、映像や細かい美術などの粗さは否めないが、男同士の熱いバトルがそれを補ってあまりあるのが特徴だ。 最大の見せ場がラストの銃撃戦。敵のアジトへと2人だけで乗り込み、次々と銃弾を打ち込んでいく。まさに"カチコミ"といったシーンで、龍虎兄弟の2人が並んで銃を構えるシーンは何よりも画になる。おそらく、OZAWAはこの青写真を描いてストーリーを紡いでいったのではないかと想像してしまうほどだ。 2人の強面からギラリと光る眼光も魅力のひとつだが、こちらをワクワクさせてくれたのはやはり華麗なガンアクション。銃の装填から撃つまでの一連の流れは非現実感もあるが、これをVシネマという美しさすら感じさせてくれる。 腕と足を失っているとは思えないアクションを見せる猛と、怖いくらいにクールに銃を扱う昇が力を合わせるクライマックスは迫力十分。まるで二人羽織のように猛が兄の腕を担いで、2丁拳銃の要領で敵を仕留める。 2人の強さだけが際立つかと思いきや、物語の最後は哀しい。「2人だけにしてくれ」と長年の付き合いである刑事をはらい、互いの手で生涯の幕引きを行うのであった。哀川演じる昇が弟に語りかけた「わかってるよ。何も言うな」という言葉の通り、寝転んで並ぶ2人の姿が何よりも雄弁に哀愁を表現しているように感じた。 小沢と哀川は現在、ともに還暦を超え、近年は強面俳優としてバラエティ番組での活躍も目立つ。小沢に至ってはYouTubeチャンネル(笑う小沢と怒れる仁志 / 小沢仁志)にも挑戦するなど、「顔面凶器」の異名をフリに使っている場面も少なくない。 だが、改めて純粋なVシネマ作品で2人が動くシーンを見ると、やはり彼らの"持ち場"はここなのだと強く実感させられる。どすの利いた声、相手を威嚇するような表情、そしてバトルなど、2人の魅力を遺憾なく味わうことができるのが「龍虎兄弟」だと言えるだろう。 文=まっつ
HOMINIS