発達障害に効く北欧発の対話アプローチ 認知症も不登校も癒やす
精神科医の斎藤環氏を、近著『発達障害大全』が話題の黒坂真由子がインタビューするシリーズの3回目(*)。不登校やひきこもりの事例に多く関わってきた斎藤氏は、近年、北欧生まれの「オープンダイアローグ」を臨床に用いて、効果を上げているという。発達障害にも有効で、医師でなくても実践可能。方法論まで具体的に尋ねた。 【関連画像】斎藤環(さいとう・たまき)、1961年岩手県生まれ。精神科医。筑波大学名誉教授。オープンダイアローグ・ネットワーク・ジャパン(ODNJP)共同代表。専門は思春期・青年期の精神病理学。「ひきこもり」の支援・治療・啓蒙活動で知られる。『社会的ひきこもり』(PHP 新書)、『オープンダイアローグとは何か』(著訳、医学書院)、『開かれた対話と未来 今この瞬間に他者を思いやる』(監訳、医学書院)など著書多数。 * 1回目と2回目のインタビューは、一番下、関連記事のリンクから読めます。 第1回:発達障害の子どもに「rTMS療法」は不適切 診断バブルを医師が懸念 第2回:発達障害と不登校 子どもの暴言・暴力対策には「親の家出」も有効 斎藤先生は長年、ひきこもりや不登校の当事者やその家族と治療的に関わってこられました。近年は、フィンランドで開発された「オープンダイアローグ」を用いることで、大きな効果を上げているそうですね。 斎藤:はい、ひきこもりや不登校はもちろん、発達障害に起因する困りごとにも活用していて、非常に有効です。 オープンダイアローグとはどのようなものでしょうか。 斎藤:「開かれた対話」によるアプローチです。 開かれた対話……。例えば、不登校の子どもがいたら、その子どもと斎藤先生が対話する、ということですか。 斎藤:いえ、その場合は、不登校の子どもだけでなく、その子どもの家族や友人、知人などにも、対話に加わってもらいます。こちらも医師一人で対応するのでなく、看護師やソーシャルワーカーなどと治療チームを組み、全員が対話に参加します。 それが、開かれた対話ということなのですね。 斎藤:オープンダイアローグは当初、統合失調症を薬物なしで回復させたことで、世界的に注目されました。なぜなら、それは精神科医にとって到底、信じがたい話だったからです。薬物を使わない「精神療法」や「心理療法」も、精神科の医療にはあり、盛んに行われています。しかし、こと統合失調症に限っては、私も含めて、どんな医師でも「薬物治療が必須」と考えていました。 その常識が覆され、世界中の精神科医が驚いた、と。