樋口菓子舗(熊本県小国町) 瓦せんべい「懐かしい味」 新商品開発にも意欲【地元発・推しカンパニー】
熊本県小国町宮原の町役場から小国両神社に向かう通りに、桃色の店頭幕が目を引く。樋口菓子舗は、小国銘菓として長く地元に愛されている瓦せんべいの専門店だ。コロナ禍後は、純和風のたたずまいに誘われるかのように、立ち寄る若い人や外国人観光客が増えている。 地元発 推しカンパニー
店主は4代目の樋口紀貴さん(50)。熊本市内で働いていた22歳の頃、5年前に他界した父に「人手が足りない」と頼まれ、後を継いだ。曽祖母が、大分県日田市のせんべい屋で身に付けた技術を生かし、家の一角で作ったのが始まりだ。 樋口さんが焼き型の機械を使い、空気を含ませて柔らかく焼き、妻の恵利子さん(49)が、はけで一枚一枚丁寧にショウガの搾り汁を入れた砂糖液を塗る。さくさくした食感とほのかなショウガの香り、上品な甘さを代々受け継いできた。アイスクリームを載せたり、お茶に浸したりして食べる人もいる。 父の代は従業員2人を雇い、毎日約1800枚作っていた。今は夫婦で1日約1200枚を製造。「お客さんの声を直に聞けるのが励み」と、店頭販売が原則だ。電話での取り寄せ以外は、卸売りや委託販売、通販はしてこなかった。 地元住民が「懐かしい味」と言うソウルフードは、法事の供え物や贈答品として根強い人気に支えられている。「お土産でもらい、おいしかった」という県外ファンも多く、大阪や京都からも注文がくる。
昨年9月、郷土の偉人を顕彰する「北里柴三郎記念館」にシアターホールが完成したのを機に、記念館から相談を受け「千円札せんべい」を開発。新千円札をかたどったせんべいに、柴三郎博士の肖像を入れた。初の店外販売で、売れ行きは好調だ。 「瓦せんべいの製法をベースに、ほかにも何かできないか考えている」と樋口さん。伝統の味を守りながら、新商品開発に意欲を見せる。(花木弘) メモ 明治時代に創業し、一時閉店期間を挟んで100年以上続く老舗。1袋2枚入り110円。ばら売りや袋入り、箱入りがある。営業は午前9時~午後5時。不定休。