「データドリブン信者」が陥る大きな落とし穴 ミス、改ざんは日常茶飯事。信用できぬ舞台裏
「数字は嘘をつかない」と信じて、統計データをもとに未来を予測して意思決定をする経営者は多い。本人は最適な意思決定をしているつもりでも、落とし穴がある。数字の入力ミスは日常茶飯事。改ざんも平気で行われている。数字を信用して予想をするのは、実はとても危険なことだ。 その一方で出た数字を冷静に分析して先読みし予想を的中させる強者もいる。その好例がギャンブラー。世界的な心理学者で、ベストセラー著者でもあるダニエル・シモンズ、クリストファー・チャブリス両氏は、どのように数字を分析すれば予想の精度が上がるのかを、最新刊『全員“カモ”』でギャンブラーを例に挙げて説明している。 【写真を見る】「見えないゴリラ実験」で知られる著者の満を持しての新著
■数字に嘘をつかせるのは、いつでも人間 ビジネスリーダーは、数字への信頼を「われわれはデータ駆動型組織だ」とか「数字は嘘をつかない」などといった言葉で公言しがちだ。データに注意を払うのは、データを無視するよりはよいことだが、その解釈には先入観が伴うことを忘れてはならない。 経済学者のカーメン・ラインハートとケネス・ロゴフは、政府債務と経済成長の関連性に関する過去のデータを分析する際、エクセルのスプレッドシートの列の一番下まで数式を埋めることをうっかり忘れてしまった。その結果、彼らは、「政府債務の国内総生産(GDP)比率が90%に達すると、経済成長の見通しが致命的に低下する」という誤った結論を導き出した。
この研究結果は、政府は過剰な支出とそれを借金でまかなうことを警戒すべき、つまり緊縮財政を実行すべきであるという賛否両論ある彼らの政策提言を支持するものだった。 ロゴフは国際通貨基金(IMF)の元チーフエコノミストで、彼の助言は影響力があった。債務危機をテーマにしたラインハートとの共著『国家は破綻する――金融危機の800年』(日経BP)はベストセラーとなり、政策立案者の必読書となった。 ■科学的データの誤りは単純なミスが原因