赤楚衛二×上白石萌歌で贈る純愛ラブストーリー映画『366日』。新城毅彦監督が見どころを解説
美海に思いを寄せる幼なじみの感情を中島裕翔が繊細に表現
ーー高校時代から30代までの20年間の恋を描く上で、演じるお二人とはどんな話をされましたか? また、監督のお気に入りシーンとは? 高校時代の湊と美海の恋愛シーンは、感情表現がストレートだったり、シャイになってしまったり、10代ならではのピュアさやかわいらしさを出したくて。2人には高校生の恋愛を思いっきり演じてほしいとお話ししました。 特にお気に入りなのは、バス停でのキスシーン。シチュエーションにもこだわって、緑の多い通り沿いのバス停にしたのですが、レトロなデザインのバスの雰囲気も良く、想像以上にキレイな絵になって、とてもかわいいシーンになったなと思っています。 それから、海岸でのクライマックスシーンは、2人の想いが感じられる印象的なシーンになっています。この作品らしいシーンを作り上げてくれましたし、お二人は事前に演技のすり合わせをした上で僕に相談してくれたので、撮影もやりやすかったですね。 また、湊と美海が東京で一緒に暮らす部屋にはチェキが飾られているのですが、それは2人が自然に撮り合ってくれたもの。スタッフが撮影するよりも、お互いにふいうちで撮ってもらったほうが自然な表情が撮れると思って、自由に撮ってもらいました。2人のいい表情がおさめられているのでぜひ注目してみてください。 ーー美海に思いを寄せながらも優しく見守る幼なじみ・琉晴を演じるのは中島裕翔くん。中島くんの役者としての魅力や、撮影で印象に残っていることを教えてください。 中島くんは、出演作を見させていただいて、繊細で自然な芝居をする方という印象があったんです。琉晴は沖縄らしい明るさを持つキャラクターなのですが、自然と沖縄らしさを表現してくれたし、「こういういいヤツいるよなぁ」って芝居で思わせてくれて。美海への秘めた思いが少しずつ表面化して、それが最後につながるという芝居を巧みに演じてくれました。 この作品を見てくださる方の中には、琉晴と同じような思いをしている人もいるだろうし、琉晴は応援したくなる役回りだと思っていて。特に素晴らしかったのは、琉晴が美海にとある告白をするシーン。1回目のテイクも良かったのですが、琉晴が抱えてきた苦しみの深さみたいなものがもう少し出たほうがいいと思い、中島くんに話したところ、彼は「わかりました」と答えてくれて。インターバルも短い中で撮った2回目がすごく良くて、スタッフもモニターを見ながらボロ泣きでしたね。 ーー音楽面や小道具にも、こだわりが詰まっているのでしょうか? 注目するキーアイテムなどがあったら教えてください。 本作は、HYの名曲「366日」からインスパイアされた作品なので、音楽や小道具も注目してほしい部分の一つです。HYの楽曲は主題歌の「恋をして」、湊と美海が出会う2003年にリリースされた「AM11:00」、そして物語の基となっている「366日」の3曲を使っています。「366日」の歌詞に、「あなたの匂い」というフレーズがあるので、匂いを感じさせるアイテムとしてゲッキツの花を映画に登場させたりもしていますね。 それから、20年前という時代を感じさせるキーアイテムとして、MDを取り入れています。湊と美海はHYの曲をきっかけに仲良くなりますが、2003年頃、メディアとして使われていたのがMDなんですよね。きっとその世代の方たちは、湊や美海のようにセットリストを作ったり、通学時にウォークマンで音楽を聞いたりと、MD自体に思い入れがあるだろうなと。そういった懐かしい楽曲やアイテムからも、ノスタルジーを感じていただけたらうれしいです。
室井瞳子