「元気に長生きするポイントは、興味・好奇心・意欲をどう保つか」88歳川淵三郎×精神科医・和田秀樹対談②
Jリーグの初代チェアマンであり、今もなお多様な“スポーツ改革”に邁進する川淵三郎氏。同じく“高齢者の医療・生き方改革”に励む和田秀樹氏。両者を突き動かすエネルギーの源泉とは。『80歳の壁』著者・和田秀樹が“長生きの真意”に迫る連載。川淵三郎対談2回目。 【写真】川淵三郎×和田秀樹、対談の様子
学校の名前を元に戻す
和田 川淵さんが理事長を務めた「首都大学東京」って、東京都立大学のことですか? 川淵 そうです。わかりづらいですよね。一時期「首都大学東京」となりました。だけど、僕もこの学校名には異論がありましてね。それで動いた。今は東京都立大学に戻っています。 和田 そうだったんですね。 川淵 学生に「学校に対する要望」を書いてもらったら、半数以上が「名前を都立大に戻してほしい」というものでした。一番のインパクトは、スーパーで接客をするアルバイトの学生が「君はどこの学生?」と聞かれ、「元都立大学の首都大学東京です」と答えた、という話を聞いたときです。 和田 自分の学校を堂々と言えないのは悲しいですからね。 川淵 歴史ある優秀な公立大学なのに、多くの学生が「首都大学って私立?」「新設校?」などと聞かれてしまう。学生は嫌だったと思いますよ。だから僕は任期を終えるときの挨拶で、職員や理事を前に「僕の遺言と思って聞いてください。都立大学の名に戻すよう知事と話すから絶対に実行してほしい」と伝え、小池都知事にお願いしました。小さな貢献ですけどね。
もっと伝統を重んじよ
和田 いや、大きな貢献ですよ。伝統を重んじることは大事ですから。日本の会社って、簡単に名前を変えるんですよね。外国の会社はM&Aでしょっちゅう乗っ取られたりしてもブランド名は変えないんですよ。 川淵 なるほど。 和田 ホテルがいい例です。マリオット、ヒルトン、シェラトン、ウェスティン。同じ会社が運営してるのにブランド名はそのままです。 川淵 ブランド名の価値をみんながわかってる。 和田 時間と努力を積み上げて勝ち得た“ブランド名”を簡単に捨ててしまう。これは本当にもったいないことです。日本製ブランドの信頼は、外国では根強いですからね。もっと名前にこだわっていいと思います。 川淵 建物もね。由緒ある建築物を日本は平気で建て替えちゃう。もったいないですよ。 和田 パリはもちろんだけど、ニューヨークでさえ、基本的な街並みは、あまり変わらない。 川淵 僕が古河電工に入ったとき、丸の内には赤レンガのビルがいっぱいあったんですよ。だけど今は東京駅しかない。残しておくべきだったと思いますね。 和田 新しいのも大事だけど、築き上げた伝統も大事にしたらいいと思いますけどね。