「人気女子アナから画家へ」伊東楓が「会社員時代の貯金が半分以下」になってもTBSを辞めたことを後悔していない《納得の理由》
TBS時代の貯金は「半分以上使った」
彼女の生き方は、常人には真似することのできない強いもののようにも思える。だが、本人は「決してそんなことはない」「誰にでもできる」と力説する。 「画家になると決めた時はもちろん腹を括りましたが、同時に『失敗したら帰国してどこかの会社に就職しよう』とも考えていました。今だって、『画家の道で失敗してもいいや』と思っている(笑)。何かに挑戦する際、多くの人は『退路を断つ』『それしか道がない』『積み上げたものを捨てたから』という思考に陥りがちなのではないか。 でも、意外とそんなことはないはずで、世の中には様々な選択肢があるものです。だから、周りを見て『もっと楽に真剣に考えていけばいいのに』と感じることは多いです。自分が進みたい道ならば真剣にトライみる。失敗しても自分にふさわしい他の道が必ずある。シンプルにそれだけではないでしょうか」 とはいえ「好きを仕事にする」ことには当然リスクもある。特に、収入面の問題は少なからず伊東の頭を悩ませたそうだ。 「ドイツに行ったばかりの頃は画家として無収入のわけですから、TBS時代の貯金を切り崩して生活していました。ユニクロの仕事が決まるまで定収入はありませんでした。正直に言うと、もう貯金額の半分以上は使ってしまっています。やっぱり、収入がない中でお金が減っていくと心が荒む感覚はありましたね。 ですが、自分が選んだ道ですから、画家として活動している間は前進あるのみ。そう考えて頑張りました。でも、これから好きなことに挑戦する方には『貯金はしておいたほうがいい』というアドバイスはしたいです(笑)」
「終わりを決めるのは自分ではない」
そんな伊東の日本で3度目となる個展「サントリー ジャパニーズクラフトジン ROKU〈六〉presents 伊東楓展 いつか訪れる 最後の日まで」が、10月1日より京王百貨店 新宿店にて開催される。 同個展では、タイトルとは別にある詩が添えられているのでここで紹介したいと思う。 「一体、どこが僕の限界なのか 終わりが いつあるのか 分からない 答えは ひたすら続く この道だけが教えてくれる だから、最後まで 行くしかない いつか訪れる 最後の日まで」 「これは、ドイツで一番つらかった時期に書いた詩です。当時は『この生活を早く終わらせたい』と思いながらこの言葉を綴っていました。でも、今この詩を見て『終わりって、自分では決められないよな』。…そう達観している私もいます。人間は皆いずれ死ぬものですし、栄枯盛衰も必ずある。 でも、それを自分で決めることはできないのではないか。死ぬ瞬間や終わる瞬間は誰にもわからない。だから、『生き切ってしまうしかない』と今は考えています。ドイツに渡った時は『早く終わりたい』と考えていた私ですが、3年間でここまで考え方に変化が現れました。あの3年間は、私にとって重い、けれどもとても大切な時間でしたね」 取材の最後、伊東にこれからの画家人生について聞いてみた。 「実は、拠点にしているドイツを離れ、画家としてより広い活動をするべくある国に行こうと考えています。正直、ドイツには愛着もあるし、拠点を変えるとなると新たに家を探したり銀行口座を作ったりと煩わしいことが増えます。しかも、また私の存在を知らない国に行くというリスクもある。それでも、画家として新しいチャレンジをしてみたい。その思いを叶えるため、また新しい挑戦をしてみようと思っています」 「終わりを決めるのは自分ではない」 3年前、自らの画家人生の寿命を3年に設定した女性は今、次のステージに歩みを進めようとしている。彼女が画家としてどう生き、そしてどんな終わりを迎えるのか。 画家・伊東楓の挑戦は続く。 (撮影/鈴木大喜) 【こちらも読む】『各テレビ局の現場スタッフが明かす「現場好感度の高い」女子アナの「意外な名前」』
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