ノーベル平和賞授賞式に出席する被団協の代表委員・田中重光さん「核兵器なくす運動の波を世界中に」
被爆者団体の全国組織「日本原水爆被害者団体協議会(被団協)」は1日、ノルウェーのオスロで12月10日に開かれるノーベル平和賞の授賞式に被爆者ら31人の代表団が出席すると明らかにした。授賞式や講演会を通じて被爆者の声を世界に届ける。 【写真】第2回国連軍縮特別総会で「ノーモア・ヒバクシャ」と演説する山口仙二さん(1982年6月)
出席するのは、田中熙巳さん(92)、田中重光さん(84)、箕牧智之さん(82)の代表委員3人に、全国各地の被爆者団体に所属する代表理事8人を含めた31人。長崎・広島の被爆者は17人で、被爆2世や32歳と若い被爆3世も加わる。在外被爆者の援護を求める運動を被団協とともに続ける韓国とブラジルの被爆者団体からも参加する。代表理事会で協議して決めた。
授賞「若い人が核を考えることにつながっている」
「『長崎を最後の被爆地に』と訴えてきたことが、各国の指導者や若者に伝わる機会にしたい」。被団協代表委員の田中重光さん(84)は1日、長崎市内の自宅で授賞式への思いを語った。
4歳の時に爆心地から6キロの長崎県時津町で被爆。2017年から被団協下部組織の長崎原爆被災者協議会(被災協)の会長も務め、核兵器廃絶に向けた要請活動や修学旅行生らへの講話を重ねてきた。
受賞決定から3週間。被災協が募る証言動画制作のボランティアには、新たに米国人を含む計5人が手を挙げてくれた。会の被爆2世組織には3人が新加入。海外の記者からの取材も受けた。「若い人が平和や核について考えることにつながっている」と手応えを感じている。
体調の不安から近年は国際会議に合わせた渡航を見送ってきた。授賞式も長時間の移動と北欧の寒さを危惧し、はじめは断った。ただ、「先輩たちが差別や貧困に苦しみながら切り開いた運動の道を大きくしなければ、核兵器はなくならない」。そうした思いが募り、周囲の後押しも受け、出席を決めた。
体に残る傷痕を見せて核廃絶を訴えた山口仙二さん(2013年に82歳で死去)や谷口稜曄さん(17年に88歳で死去)ら、被災協の歴代会長の写真も携え、式に臨むつもりだ。「被爆地から発信し続けてきた核兵器をなくす運動の波を、世界中に広げたい」と決意を新たにしている。(美根京子)