マネックス・広木隆氏が語る「高配当利回り株」投資の魅力
日本銀行のマイナス金利解除後も、低金利が続いています。「普通預金の利率が20倍に」などと言われても、引き上げ後の利率はたったの年0.02%。今までが低すぎただけに、利息が付く実感はまったく得られません。 一方、株式市場には年5%の利回りが期待できる投資対象が、まだまだたくさんあります。新NISA(少額投資非課税制度)を活用して、高い配当利回りを得るためにはどうすればいいのか。その方法を説明したのが、『 キャリア30年超のマーケットのプロが教える 利回り5%配当生活 』(かんき出版)です。 その著者である、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏に、これからのマーケットの行方、高配当利回り銘柄投資の魅力などについてうかがいました。 ■高配当利回り銘柄の魅力は続く 3月18日、日経平均株価は34年と3カ月ぶりに終値で最高値を更新しました。2023年中、日経平均株価はほぼ横ばいの推移が続いたものの、マーケットの環境が好転していただけに、そう遠くない将来、この瞬間に立ち会えるという確信はありました。 ただ、自分が想定していたのに比べると、いささかオーバースピードの感はありました。実際、3月22日に4万1087円という高値をつけたあと、4000円幅で調整したものの、今年に入ってからの上昇スピードを考えれば、ちょうどいい調整局面ではないかと考えています。 基本的に株価の先行きに対しては楽観しています。正直、想像していた以上に、株式市場に資金が流入しているからです。 新NISAがスタートして3カ月間のうちに、NISA口座には3兆円超の資金が流入してきました。このペースが続けば、2024年の1年間で12兆円から15兆円の資金が流入することになります。 もちろん、そのうちオール・カントリーのような海外市場に投資するファンドへの資金流入も含まれるので、全額が日本株の買いにつながるわけではありませんが、NISA口座に入ってくる資金はそう簡単に抜けないものと考えられるので、このペースが続くと、やがて国内株式市場にもかなりのインパクトにつながるはずです。個別株投資という点では、JT(2914)やNTT(9432)、あるいは銀行株のような、高配当利回り銘柄が物色の中心になる可能性が高く、その魅力は当面、続くものと思われます。 数少ない懸念材料としては、昨今、再び加速しつつある円安です。 基本的に円安は、日本の輸出企業にとって業績を向上させる要因になるので、株価にとってはプラス材料ではあるのですが、それも程度問題です。あまりにも円安が行きすぎると、インフレ上昇など弊害も出てきます。円安の行方は注視しておきたいところです。 ■観点を変えればグロース銘柄も買える ところで、2023年以降の国内株式市場は、バリュー株、高配当利回り銘柄が中心に物色された相場が続く一方、グロース銘柄は非常に厳しい状況に追い込まれています。グロースを代表する指数である「グロース250」は、今年に入ってからの株価上昇にまったく付いていくことができず、底ばいが続いています。 こうしたことから、グロース株投資は完全に置いてけぼりにされ、投資家の間でも総悲観ムードになっているのです。しかし、グロース銘柄の定義を少し別な観点から考え直すと、日本にもまだまだ物色できるグロース銘柄が存在します。 グロース銘柄は高成長が期待される企業を指すのですが、日本の場合、上場したての非常に小粒な新興企業をグロース銘柄とみなす傾向があります。この手の企業は、そもそも外国人投資家のスクリーニングにいっさい引っかかってこないため、いくら外国人投資家による日本株買いが活発化しても、買われにくい状況にあります。まさにグロース250に採用されている企業が、この典型例といってもいいでしょう。 ただし見方を変えれば、日本にも株価上昇が期待できるグロース銘柄はあります。グロース250という枠にとらわれず、本当の意味で成長する力を持った日本企業は何かと考えると、例えば半導体製造装置をはじめとして、半導体の製造に必要な要素技術を持っている企業や、あるいはソニーグループ(6758)のように、大企業で配当利回りは低いのだけれども、たくさんの無形資産を持っていて、それが成長を支えているような企業も該当するはずです。 こうして考えると、今の株式市場はバリュー銘柄が好調で、グロース銘柄が不調というよりも、グローバルマネーのお眼鏡に適うかどうかという点が重要視されているように思えます。 ■納得したうえで銘柄を選ぶ では、新NISAを機に株式投資を始めてみようと考えている人は、どういう株式に投資するべきでしょうか。 大事なのは、自分が理解・納得できる事業を行っている企業の株式に投資することです。個別銘柄投資はここがとても重要で、事業内容への納得感を持って投資しないと、株価が下落した時などに狼狽することになります。何もわからないけれども、とにかく株式市場からの恩恵を受けたいと考えるのであれば、素直にインデックスファンドを買ったほうがいいでしょう。 個別銘柄投資は、自分が納得できるところまで調べて投資するからこそ、インデックスを上回るリターンを享受できるのです。反面、インデックス以上に下がるリスクもあるからこそ、納得感が必要になるともいえます。 だからといって、アナリストのような専門知識が必要というわけではありません。例えばオリエンタルランド(4661)に投資するなら、自分自身の体験を通じて、ディズニーランドというコンテンツの持つ魅力が廃れるようなことにはならないだろう、という程度の知識と理解で、納得感が得られれば、それで十分です。 とにかく納得してから買うこと。それが個別株投資の第一歩です。 (構成:鈴木雅光) 広木隆(ひろき・たかし)/マネックス証券 チーフ・ストラテジスト。上智大学外国語学部卒。神戸大学大学院・経済学研究科博士後期課程修了。博士(経済学)。社会構想大学院大学教授。国内銀行系投資顧問、外資系運用会社、ヘッジファンドなど様々な運用機関でファンドマネージャー等を歴任。2010年より現職 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
広木 隆