「先生、大丈夫?」子どもに心配されるほどの長時間勤務 欠員補充されず疲弊する学校現場で何が…
長野県内の小中学校で教員の欠員が相次ぎ、教育現場が窮している。背景にあるのは、これまで欠員補充に充ててきた講師のなり手不足。代わりの人材を確保できない学校では他の教員が穴埋めをしており、義務教育の質を維持していくにも悪い影響が出かねない。教員が働く環境の改善を含め、効果的な対策を早期に打ち出すことが問われている。 【グラフ】急増する小中学校教員の欠員 先生忙しすぎて志望者も激減、教員補う講師まで足りない… 長野県内の現場、学びへの影響も懸念
朝7時出勤し帰宅は夜9時 空きコマも減り授業準備できない
10月末、東信地方の小学校。ひっそりした夜の教室で20代の男性教諭が児童の提出物に目を通し、黙々とコメントを書き込んでいた。「欠員が出てから授業の空きコマがほとんどなくなり、残業しないと追いつかない」。口調は重い。
この学校では10月、教員1人が長期休業に入って欠員が生じた。年度当初から分かっていた欠員だったが、補充する人材は見つからないまま。業務は今、他の教諭と協力してなんとか埋めている。
男性教諭がこれまで担当していた授業は週29時間のコマのうち23時間程度だった。6時間の余裕があり、採点や授業の準備などに充てていた。しかし、欠員を埋める現在は担当する授業が28時間に増加。授業以外の業務は、勤務時間外にこなさないと終わらなくなった。
午前7時ごろ出勤し、帰宅は午後9時を回ることも。「児童のためにどこまでやるか、諦める部分もある」。欠員が出る前は画用紙などを使って独自の教材を作っていたが、「今はそこまでできない」とこぼす。
教え子の児童たちに相談して負担を減らした。宿題は児童に丸付けをした上で提出してもらい、内容を確認するだけにした。給食の時間も盛り付けをしていたが、「業務に時間を充てたい」と児童にやってもらうことにした。
余裕のなさは担任を受け持つ子どもたちとの触れ合いを減らし、児童の相談に乗る時間もままならない。「勤務の大変さは日常的に接する児童たちに伝わる。高学年の教え子に『大丈夫?』と心配されることもある」と打ち明ける。
「担い手を増やさないと義務教育は維持できない」
「預かった子どもを見る先生がいません。こんな状況でいいんでしょうか」。東信地方の中学校に勤務する40代の男性教諭は10月29日、県教職員組合(県教組)が上田市の上田駅前で行った街頭宣伝活動でそう声を上げた。