勢いが止まらない映画『ルックバック』クリエーターたちへのすごさを痛感、尊敬できると大絶賛される理由
メインキャラの声優たちには圧巻の一言
また、映画の入場者特典として原作ネームを全ページ収録した『Original Storyboard』がついてくる。つまりはネ ームと映画を見比べることが可能。そもそも、『ルックバック』はネームだけでも十分面白い。“ネームは漫画の設計図”と言われるが、設計図の時点で面白い作品が映像化されればそれは面白くて当然と言って良い。とはいえ、効果音やセリフという音が入り、登場人物の心情に合わせたBGMやアニメーションがいずれも作品の雰囲気を彩り、設計図をベースにした五感をフルに楽しませてくれる巨大テーマパークを制作陣が建築していた。 中でも、メインキャラの声優を務めた河合優実と吉田美月喜の演技は圧巻の一言。河合が演じた藤野はどこか調子が良く、自信過剰な女性であるが、その雰囲気を見事に演じていた。週刊誌の漫画賞を受賞して大金を獲得したことを受け、藤野が京本を遊びに誘うシーンがある。その誘い方がまさに、藤野の“調子の良い地元のツレ感”が出ていて最高だった。一方、方言が強く、内気な京本という役を演じ切っていた吉田も見事。印象的なシーンで言えば、やはり藤野が京本の家に卒業証書を届けに行ったシーンである。憧れの“藤野先生”に対面して、同級生ということも忘れて興奮して取り乱す姿はまさに“推し”と対面した小学生そのもの。京本に愛らしさを覚えないことは不可能だった。 ネームの良さを汲み取り、制作陣がより良いものを作り上げている過程が想像でき、クリエイティブ業界で働く人のすごさを容赦なく痛感させてくる映画『ルックバック』。エンターテインメントの力強さを改めて実感できる作品だ。
望月 悠木