追悼…バルセロナ五輪で8本の痛み止め注射を打ち“涙の金メダル”を獲得した古賀稔彦氏は”優しい嘘”をついた
古賀さんにけがを負わせた責任を感じ、打ちひしがれていた吉田さんを「オレは絶対に金メダルを取るから大丈夫だ」と逆に励ました。前日30日の男子78kg級をオール一本で制し、女子を含めた柔道勢に大会初の金メダルをもたらしながら「古賀先輩が優勝しないと、僕の金メダルの価値も半分でしかない」と話していた吉田さんも、人目をはばからずに号泣していた。 セコンドについた恩師の吉村和郎コーチは、古賀さんの左ひざを「普通の人間だったら、歩けないような状態だった」と試合後に振り返った。柔道家としての強さだけでなく、逆境を乗り越える人間としてのたくましさと、愛子さんや吉田さんに見せた優しさ。 日本テレビ系「ミヤネ屋」の取材に応じた愛子さんは、「病気を知らなかった」と語っている。けがを隠したあのバルセロナ五輪のときと同じように最後まで古賀さんは”優しい嘘”をついた。合掌。 (文責・藤江直人/スポーツライター)