中国・寧夏の「ひざまずく巨人」 16年間の慈善活動が共感呼ぶ
【CNS】中国内陸部の寧夏回族自治区(Ningxia Hui Autonomous Region)中衛市(Zhongwei)に暮らす胡雷(Hu Lei)さんの自宅は、1LDKの質素な公共賃貸住宅だ。2歳の時にポリオを患って以来、足が不自由になって車椅子生活を送っている。夜になると繁華街に屋台を出し、手工芸品や中古品、おもちゃなどを販売している。 彼は16年間にわたって、500人以上の貧しい学生を支援する慈善活動を行っており、寄付総額は100万元(約2089万円)を超えている。彼自身は質素な暮らしをしており、年間の生活費は1万元(約20万円)を超えないという。胡さんの慈善活動がメディアで伝えられるとネット上で話題になり、いつしか「ひざまずく巨人」というあだ名で呼ばれるようになった。 親族によると、胡さんの幼少期は決して幸せなものではなかった。1995年に、2歳の時にポリオに罹患(りかん)した。父親は息子の病気のせいで塞ぎ込み、悲しみを紛らわすために酒に酔うようになった。その後、父親は鉄道事故に遭い、他界してしまった。母親は後に再婚し、手足に障害がある胡さんは祖父母の世話になることになった。 胡さんは8歳の時から生活のために廃品回収を始めた。毎日昼食後に家を出て、5キロの道のりをはって廃品を拾い、午後6時頃に帰宅する。「ビール瓶が一番いい値になった。次にペットボトル、段ボールの順だった。月に数十元(数百円)あれば暮らしていけた」と胡さん。 そんな生活は決して悪くなかったという。「見知らぬ人が食べ物や服をくれることも多く、直接お金をくれる人もいました。子どもの頃から社会の温かさを実感していました」 心を痛めたのは祖父の死だった。祖父は胡さんの人生観を形作った人でもあった。祖父は昔からホームレスの人たちを助けていた。胡さんにこう言ったことがあるという。「おじいちゃんとおばあちゃんは、この世で良い行いをした。たとえ将来一緒にいられなくても、誰かが必ずおまえを助けに来てくれるだろう」 胡さんが初めて慈善活動をしたのは橋の下だったという。祖父が亡くなった後、彼は橋の下にいたホームレスの男性に服と食べ物を渡した。それからは他人を助ける達成感に夢中になっていく。 彼の慈善活動はメディアでも頻繁に取り上げられるようになった。2021年に河南省(Henan)が豪雨に襲われた際、胡さんは2万元(約42万円)相当の物資を積んだトラック2台を購入し、被災地に寄付している。 胡さんの28歳の誕生日だった2021年11月29日、寧夏回族自治区固原市(Guyuan)の小学校を訪れ、農村の児童525人に学用カバンとノート、消しゴムなど総額3万450元(約64万円)を寄付した。これは自身の誕生日を祝うための寄付だったという。 胡さんと一緒に活動している羅吉(Luo Ji)さんは「胡さんがこれほど熱心なのは、世界中の苦しみを経験しているからかもしれない」と話す。 胡さんはここ数年、寄付する資金をかせぐため、毎日屋台を出し続けている。屋台の準備はズボンを履くことから始まる。これは準備の中で最も時間と労力がかかる部分だ。厳冬期には薄い綿のズボンから分厚い綿のズボンまで、5枚のズボンを重ね着しなければならない。足を伸ばすことができない胡さんは地面を転がり、ひざまずく姿勢から地面に座る姿勢になって、歯を食いしばってズボンを引き上げるのだ。 慈善活動から何が得られるのか。胡さんは、「多くの人々から愛情を受け取ることができる」と答える。幼い頃に両親と離別し、祖父母に育てられた胡さん。彼にとって慈善活動とは、人間同士が愛し、愛されることなのだ。(c)CNS-新京報/JCM/AFPBB News ※この記事は、CNS(China News Service)のニュースをJCMが日本語訳したものです。CNSは1952年に設立された中華人民共和国の国営通信社です。