軽井沢バス事故2年、救助関係者ら「悲惨な事故を繰り返さないで」
スキーツアーの大学生ら15人が死亡、多数の重軽傷者が出た長野県軽井沢町のバス転落事故から2年を迎えた15日、現場には遺族や犠牲者の友人、救助関係者ら多数が慰霊に訪れました。「悲惨な事故を繰り返さないで」との願いの一方、事故を起こしたバス運行会社の責任の本格追及や、貸し切りバス業界への指導態勢の強化などはこれからで、遺族らは「事故を風化させない対策を」と訴えています。
遺族らが事故現場に献花
軽井沢町の国道18号碓氷(うすい)バイパスの事故現場には、転落事故があった時刻の午前2時前から亡くなった大学生の友人らが訪れて献花。明るくなってからは軽井沢町、軽井沢警察署、国交省などの関係者、地元住民らが慰霊に訪れました。
2年前の事故発生時、警察と消防からレッカー車の出動を依頼されたという小諸市のレッカーサービス会社の加藤幸之助社長(44)も慰霊に訪れ、「当時、現場に着くとすでに警察、消防の多数の車が来ていた。ガードレールが絡み付くように曲がり、負傷者が座り込んでいた。倒れたまま動かない人もいた。一生忘れられない光景だった」と語りました。 同社長は現場にレッカー車3台とマイクロバス1台を投入。さらに本格的な救助活動のためにクレーン車も動員しました。当時を振り返る同社長は「私の長男は中学生で、事故に遭った大学生と年齢も近い。それを思うと……」と目頭を押さえ、「二度とこうした事故を起こさないでほしい」と語りました。
軽井沢のバス事故は2016年1月15日午前2時前、碓氷バイパスを軽井沢町内に向けて下っていたスキーツアーの大型バスがガードレールを越えて右前方の道路外に転落、大学生と運転手2人の15人が死亡し、26人が重軽傷を負いました。 バスは当時、異常な高速でバイパスを下っていたと見られ、長野県警は2016年3月、事故現場付近で大型バスを使った実況見分を実施。異なる条件下での運転状況や走行状態などを調べました。ギアの状態や運転手の運転経験などさまざまな条件が絡むため捜査は慎重に行われ、県警は昨年、バスの運行会社の社長や当時の運行責任者らを業務上過失致死傷などの疑いで書類送検しました。遺族らは長野地検が起訴してバス転落事故の責任を明らかにするよう訴えています。 事故後の2016年1月29日現在で国交省が全国17か所で行った緊急の街頭監査によると、監査車両96台のうち半数近い45台に運行指示書の記載不備など法令違反や法令違反の疑いがあることが分かり、事態を深刻に受け止めた同省は文書で貸し切りバスの安全確保の徹底を日本バス協会に求めました。同時に軽井沢スキーバス事故対策検討委員会を設置して運行管理の強化など総合的な対策を打ち出しています。 しかし、貸し切りバス業者への監査を強化するための巡回指導員の配置は人手不足の問題を抱えるなど課題は多く、業界と行政で実効ある対策をどう打ち出すかが問われています。
----------------------------------- ■高越良一(たかごし・りょういち) 信濃毎日新聞記者・編集者、長野市民新聞編集者からライター。この間2年地元TVでニュース解説