次世代ロータリー搭載 マツダ「RX-VISION」への4つの疑問
ネタバレになるが、このRX-VISIONは、直近に生産する予定がない。それだけにマツダとしては制限が少なく創造力を無制限に発揮できるチャンスでもあるわけだ。だからとりあえず「エンジンに合わせてノーズを短くしよう」という制限を外した。とにかく古今東西のFRスポーツカーの中で、最高に美しい形を魂動デザインの延長線上に表現してみること自体が目的だったわけだ。だから前田氏は彼の信じる美しさを形にした。 それがロングノーズの理由である。ただし、ロータリー搭載ということがデザイン上に何も現れていないかというとそうでもない。例えばこの極端に低いボンネットは、このデザインに見合う出力のレシプロエンジンを納めることが難しいだろう。RX-VISIONはそのノーズの薄さでロータリー搭載車であることを訴求しているのだ。
RX-7の後継なのか、RX-8の後継なのか?
さて、それではRX-VISIONは果たしてRX-7の後継なのか、RX-8の後継なのか? 疑問の根底にあるのは、RX-VISIONの伸びやかな形だ。歴代のRX-7はそれぞれの時代背景の中で、世界的にもレアなピュアスポーツカーであった。そう考えると、RX-VISIONの形はピュアスポーツらしい凝縮感とは少し違う。スポーツカーらしいタイヤの踏ん張りや安定感はあるものの、むしろ伸びやかでエレガントである。どちらかと言うと、ヒラリヒラリと身をかわす俊敏性を形にした造形ではなく、豪快な加速や高速走行をイメージさせる。 コンパクトを目指さないその造形に「フル4シータースポーツ」を標榜したRX-8が脳裏をかすめるのである。しかし、実車を見てみると後席の頭上空間はミニマムであり、これではフル4シーターにはならない。 前述の藤原常務も「RX-7というのは2人か4人乗り(つまり2+2座)のGT的なクルマですからね」とニヤリと笑う。筆者はRX-7をピュアスポーツと認識していたため、GT的という言葉に少々驚いた。それはおくとして、藤原常務は、はっきりとどちらだと断言したわけではないが、少なくともその言葉の先にあるものがRX-8ではないことは確信した。 言われてみると、ロードスターという、より先鋭的なライトウェイトスポーツがある今、RX-7がただそれの拡大コピー的位置付けというわけには行かない。むしろより高い動力性能を背景としたGTになることは自然なことだ。つまりマツダにとって、RX-7とロードスターは単純な兄弟関係ではなく、方向性の違う二つのピークになるというわけだ。 俊敏性を求めるならベストバランスはロードスターであり、それに動力性能を上積みすれば違うクルマになる。ロードスターにはおそらく間もなく2リッターエンジンが追加されるだろうが、マツダの人たちははっきり言う「ベストバランスは1.5です」。 実は、世界で一番ロードスターが売れている北米からは「1.5リッターは要らない」という声があったという。それに対してマツダは「それなら北米にはロードスターを出さない」という強烈な回答をしたという。すごい事を言うものだ。しかし、スポーツカーに求めるものは十人十色だ。違うバランスを求める声があるから2リッターも用意するが、マツダ自身が俊敏性を求めるスポーツカーの理想とするものは変わらない。1.5リッターをラインナップすることを条件に2リッターモデルを用意した。マツダにとって、エンジンとシャシーのバランスはそれほどまでに大事なことなのだ。 当然ロータリーという別の、しかもはるかに高出力なパワーユニットを搭載すれば、クルマとして成立させるバランスが違う。次世代RX-7はロードスターと異なるピークを目指すものになるという事だ。