ホンダと日産統合へ 期待と不安交錯「雇用を守って」 埼玉県内の関係者の声
ホンダと日産自動車は23日、経営統合の本格的な協議入りを発表した。三菱自動車は年明けに合流するか判断し、実現すれば世界3位の巨大グループが誕生する。埼玉県内には、寄居町にホンダ工場のほか、日産系の自動車部品メーカーなどが多数稼働している。経営統合への期待と不安が交錯する中、関係者は「雇用を守ってほしい」と語る。 寄居町にあるホンダの工場【写真2枚】
ホンダと日産の経営統合の背景には「100年に一度」と呼ばれる自動車産業の大変革期がある。人工知能(AI)を活用した自動運転技術や電動自動車(EV)の開発分野で米テスラや中国BYDなど海外の新興メーカーに立ち遅れており、両社が持つ技術や人材などのシナジー(相乗)効果で車両の電動化、知能化の強化を図る。 県内には寄居町にホンダの四輪車完成工場、小川町に同社エンジン工場、さいたま市内などに日産系列の関連部品メーカーなどが存在する。県内5万2870社の中小・個人事業主が加入する県商工会連合会の江原貞治会長は「経営の効率化は今後のグローバル戦略でどうしても必要なことだと思う。世界市場での日本車の復権を果たしてもらいたい」と期待を寄せた。ただ会員企業の中にも自動車関連の下請け企業が多数存在することから、「今回の統合で雇用が失われることがないよう切にお願いしたい」と話した。 「スカイラインGTーR」など日産車をこれまで10台以上買い替えてきたという松伏町の会社経営60代男性は「日産ブランドがそのまま残ると聞いて安心した。エンジンや車のフォルム、ワンポイントデザインなど日産ならではの独自性は失わないでほしい」と要望した。
寄居町の峯岸克明町長は「ホンダの寄居工場は完成してから10年以上が経過したが、町としては非常に大きな存在。経営状況が変わっても引き続き工場が活発になることを期待したい」と語った。 寄居町商工会の大久保和勇会長(68)は「今後については不安の方が大きいが、町にとってホンダの工場があるのは大きい。町と密接に関わってきているので、経営がどこと一緒になったとしても、地域との関わりを深めていければ」と話した。 県内で自動車部品製造会社を営む男性は「日産自動車を心配していたが、外資系ではなく、国内のメーカー同士の統合になれば安心。自動車産業は日本の産業を支えている屋台骨で、お互いの強みを出し合って、市場も使い分け、外国との競争に打ち勝ってほしい」と期待を込めていた。 ■埼玉県、協議の行方注視「今後も情報収集を」 県内ではホンダの生産拠点である埼玉製作所の完成車工場(寄居町)とエンジン工場(小川町)が稼働しており、県企業立地課も「埼玉製作所とは常に情報を交換しているが、状況を伺っても情報は入ってきていない。何かあれば対応することになるので、今後も情報収集に努めたい」と協議の行方を注視する。