3度目の逮捕となった羽賀研二さん、有罪なら実刑の可能性は?
●「文書偽造罪」は成立しない
ネット上には「文書偽造(刑法159条など)にもあたるのでは?」という声もありました。 本件では、登記移転の手続きのためには、羽賀氏から羽賀氏の会社に不動産の譲渡が行われたことを証明する書類(売買契約書など)が必要となります。そうすると、羽賀氏が嘘の内容の契約書等を作っているはずだから、私文書偽造罪になるのではないか、ということのようです。 しかし、刑法上の文書偽造は、基本的に、作成権限がない人が、作成権限があるかのように偽って文書を作成する場合に成立します。本件では、羽賀氏は自分の会社に不動産を売却するという契約書を作成する権限自体はありますので、私文書偽造罪は成立しません。
●司法書士が逮捕されたのは、なぜ?
本件では、司法書士も逮捕されています。 司法書士は、登記手続等の専門家です。おそらく、本件のような嘘の登記に加担したことで、羽賀氏の共犯として逮捕されたのだと思われます。 ただ、羽賀氏が司法書士に単に登記手続を頼んだだけだと、司法書士としては頼まれた手続きを仕事として行っただけということになり、羽賀氏の共犯にはならないと思われます。 反面、羽賀氏から強制執行のことを相談され、羽賀氏と結託して不動産の仮装譲渡・登記を行ったといえるような事情があれば、共犯となりそうです。今後このような点について捜査が進んでいくのではないでしょうか。
●量刑はどうなる?
以上のように、現在報道されていることが真実であれば、電磁的公正証書不実記録罪、同供用罪、強制執行妨害目的財産譲渡仮装罪、が成立することになりそうです。 前二者は、嘘の記録を作って閲覧可能な状態にするところまで、全体として一罪となります(牽連犯といいます。刑法54条1項後段)。 また、電磁的公正証書不実記録・供用罪は公文書への社会的信用を保護する規定で、強制執行妨害目的財産譲渡仮装罪は、民事上の強制執行が適切に行われることを保護する規定ですから、それぞれの罪は守るべき利益(保護法益)が異なるといえるでしょう。 そこで「併合罪(刑法45条前段)」となり、最大で重い罪の1.5倍(7年6ヶ月)までの懲役刑となる可能性があります(同法47条本文)。実際にはそこまで重くはならないように思えますが、有罪であれば実刑判決が下されることになりそうです。 なお、羽賀氏は2020年に実刑判決を言い渡され、21年9月に出所しているようですので、そもそも次の判決がその5年後(2026年9月)までに下されるようであれば、原則として法律上執行猶予がつけられません(刑法25条1項)。 執行猶予が法律上つけられる場合となっても、前科との関係で今回も実刑判決が下される可能性が高いでしょう。 また、強制執行妨害目的財産譲渡仮装罪では罰金の併科が可能ですので、さらに罰金刑も下される可能性もあります。