東京日仏学院のビストロと、韓国発のカフェ。藤本壮介と長坂常による空間も魅力のニュースポット──週末カルチャーアドレス
「週末のカルチャーアドレス」では、いまチェックしておきたいアート&カルチャースポットを紹介。今週末はフランス、韓国からやってきたふたつの飲食店を、建築とともに楽しもう。 【写真を見る】韓国発のコーヒーショップ、ボフミルコーヒー千駄ヶ谷 東京をチェックする
■東京日仏学院にビストロが帰ってきた 都心にありながら緑豊かな空間で愛される飯田橋の東京日仏学院。その新校舎ビレッジ・アズ・アンスティチュを手がけたのは、建築家の藤本壮介だ。もとあった植栽を可能な限り残した計画が功を奏し、いまでは建物と緑が溶け合いながら心地よい空間を作りだしている。一方で、長く東京日仏学院に通う人にとって惜しむべくは庭に面したビストロの閉店にあった。その長き不在がついにフランス料理界の伝説的なシェフ、ベルナール・ロワゾーの精神を受け継ぐビストロ「ロワゾー・ドゥ・フランス」のオープンで解消された。 ロワゾーはフランス料理界にあらたな可能性を提示した人物だ。バターやクリームによる濃厚なフランス料理ではなく、素材の味を引き立てるシンプルな味付けでフランス料理に革新を起こした。現在はロワゾーの遺志を継ぐ娘たちによって、父の築いた料理は継承されている。 姉妹はともに日本に留学や修行の経験をもち、日本とゆかりも深い。営業形態はカジュアルなビストロだが、ランチ、ディナーともにコースで、プロヴァンス、ブルゴーニュ、リヨン、パリなど、フランス各地の郷土料理を楽しむことができる。ようやく暑さも落ち着き、中庭に面したテラス席で食事を楽しむのも心地よい季節に。オープンエアでロワゾーのスペシャリテとともにフランスの文化を堪能したい。 ロワゾー・ドゥ・フランス 東京都新宿区市谷船河原町15 東京日仏学院1F 03-6280-7803 営業時間:11時30分~15時、17時30分~22時 月曜・火曜休 https://ldf-tokyo.jp/ ■ソウルの注目カフェが東京に仮設店舗をオープン! 韓国で人気を集めるアントラサイトコーヒーの設立者の一人が立ち上げた、ソウル・聖水(ソンス)のコーヒーショップ「ボフミルコーヒー千駄ヶ谷 東京」。カフェの入居する建物が建て替えとなり、その仮店舗を東京・千駄ヶ谷にオープンさせた。なんとそのロケーションは建築家、長坂常が率いるスキーマ建築計画の事務所の一角だ。 なぜソウルではなく、東京なのか。建て替える建物を長坂が設計することからオーナーが頻繁に事務所を訪れており、その流れで出店が決まったという。長坂はこのカフェを「モックアップカフェ」と表現する。東京同様、ソウルも都市開発が絶え間なく進む街だ。ジェントリフィケーションで家賃が上がり、街に馴染み、愛されるなかでカフェが撤退せざるを得ないことも少なくない。そこで長坂らは今回、そうした都市の変化に飲まれることのない店づくりをともに進めようと計画を行っている。サードウェイブの次なるフォースウェイブのあり方だ。この仮設店舗は長坂の事務所内に生まれた原寸大の模型であり、そこで運営まで新たな可能性を探る。 そしてソウルの店同様、ここでは月替わりでさまざまなロースタリーから豆を取り寄せる。いまソウルで注目すべきロースタリーの味を楽しめるのもうれしい。きゅうり、パクチー、ライムをすりおろした自家製のイキイキジュースも。検証とともに姿かたちやサービスまで変わっていきそうなカフェを、ぜひ自ら体験してほしい。 ボフミルコーヒー千駄ヶ谷 東京 東京都渋谷区千駄ヶ谷3-31-5 営業時間:9時~17時30分(月~金)、10時~18時30分(土日祝) https://www.instagram.com/bohumil_coffee/ 写真(ボフミルコーヒー千駄ヶ谷 東京)・阿部健、文・山田泰巨、編集・遠藤加奈(GQ)