株価低迷続くボーイング、今後の見極めポイントはどこか
アメリカの証券業界で20年以上にわたって活躍したプロトレーダーが、米国株のチャートの見方を平易に解説する。 ■株価の低迷が続くボーイング 世界最大級の航空機会社であるボーイング( BA )が揺れています。短期間に問題が次々と報道され、2024年が始まってから3月15日までの間に株価は30%の大幅下落となりました。 同期間のS&P500指数は7.28%の上昇ですから、ボーイングの低迷ぶりがわかります。同社は74銘柄で構成される「航空&防衛」という業種に属し、マイナス30%の大幅下落によって現在は同業種内で63位という位置になります。 ここまで低迷の続くボーイングですが、ウォール街のアナリストと一般投資家の同社に対する意見は一致していません。 投資サイト「Seeking Alpha」に掲載されているボーイングの平均評価を見ると、ウォール街のアナリストは「買い(BUY)」という投資判断をしています。一方、一般投資家は「ホールド(HOLD)」という評価をしており、現時点では買うことも売ることもできないという意見であることがわかります。 ■事故の多い会社の株を嫌悪する投資家 ウォール街のアナリストたちの平均投資判断は「買い」です。しかし、フィデリティ証券に掲載されている8社の独立系調査会社のアナリストは極めて厳しい見方をしています。投資判断は、1から10までの数値で表記され、ボーイングは「1」という極めて弱気な、そして最低の得点となっています。 単純な結論ですが、膨大なデータを持つ独立系調査会社のアナリストがボーイングには投資できないと言っているのですから、事故の多い会社の株は買いたくないという一般投資家の意見と同じです。 バリュー株の長期投資に焦点をあて、2015年以来「Seeking Alpha」に投稿しているThe Value Portfolioのリーダーは、ボーイングについてこう書いています。 ボーイングの商業部門は大きな危機に直面している。(頻繁に起きる事故と問題で)顧客は同社に対して腹を立てており、エアバスに乗り替えることを検討している。さらに、競争相手が限られている防衛部門でも苦戦が見える。重要な2つの部門で問題を抱えているのだから、株主はボーイングから満足できる利益を望むことはできない。■信頼度の低さがチャートからも読み取れる では、具体的に考察すべくボーイングの週足チャートを見てみましょう。 「A」は、コロナ禍後の安値となった2020年3月から引いた固定VWAP(固定出来高加重平均価格)です。「1」でわかるように、株価の固定VWAP割れが起きています。 もちろん、前回のように(「2」を参照)、株価がすぐに回復してしまう可能性もあります。しかし単純に解釈すると、固定VWAP割れは2020年3月の安値以来、買った人たちの損益合計がマイナスになったことを意味しますから、どう考えても強気な出来事ではありません。 次の注目は、赤い線で示した2023年10月の安値です(「B」)。チャート上で目立つ高値と安値は買いのポイント、そして売りのポイントとして広く使われています。相次ぐ事故が報道されているだけに、投資家のボーイングに対する信頼度は極めて低い状態です。 普通の状況なら、「B」に達したら買ってみようと思う人たちは多いでしょうが、今回の場合は「B」での積極的な強い買いを計画している投資家は少ないことでしょう。 繰り返しになりますが、チャート上で目立つ高値と安値は多くの投資家に注目されます。ですから、もし株価が「B」を割ってしまえば、投資家たちの目は必然的に2022年9月の安値「3」に向きますから、投資姿勢はいっそう消極的になります。 ボーイングの顧客たちがエアバスへの乗り換えを考えているように、株価が「B」の安値を割るようなら、多くの投資家たちの資金が高リターンを求めて、ほかの株へ移動することでしょう。 鎌田 傳(かまだ・つたえ)/カリフォルニア州ロサンゼルス在住の専業投資家。高校卒業後に渡米。大学卒業後、1988年にカリフォルニアのベンチャーキャピタルに入社。ユニオンバンクの証券部や投資情報会社「TradingMarkets.com」のマーケットアナリストなどを経て現在に至る。著書に『 米国株チャート最強の教科書 』(SBクリエイティブ)。「T.Kamada」として情報発信するX(旧Twitter)( @Kamada3 )や ブログ のファンも多い。好きな映画は『フィールド・オブ・ドリームス』。 ※当記事は、証券投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的としたものではありません。
鎌田 傳