【未知なる旅は】『FF7 リバース』のポーションを作ろう!第2回「Materialize(具現)」篇【続く】
~前回までのあらすじ~ 『FINAL FANTASY VII REBIRTH』(以下、『FF7 リバース』)に登場する要素「アイテムクラフト」の素材に、現実との共通点を見出した筆者。 「ポーションをこの手で作れるのではないか?」との思いから、素材となるハーブの知識を得るべくハーブ園を訪れ、その植生や効能を体感する。 園を後にし、ハーブをその手に携えた筆者は、いよいよポーション作成に取り掛かろうとしていた……。 【画像全82枚】 「『FF7 リバース』のポーションを作ろう!」後篇は「Materialize(具現)篇」と題し、前回知識を得たハーブを素材に「ポーション」「メガポーション」「やまびこえんまく」「エーテル」の4種類のアイテムを実際に作成していきます。 「FF」で回復と言えばこれ!ポーションをクラフト! まずは基本のポーションから。ポーションはHPを350回復させるアイテム。材料は以下の通り。 セージ×5 星の恵み×2 初歩的なアイテムだけあって素材の量は少なめです。 “セージ×5”とは5グラムなのか5房なのか、ひとまず5枚の葉を苗から採取しました。 おそらく「蒸留」や「抽出」といった技術が必要なのでしょうが、もちろん筆者はそのようなことができる設備は持ち合わせていません。すりこぎを使って地道にセージを擦っていきます。 葉の繊維が筋張って擦りづらく、団子状になってきました。 擦りやすくするために少量の水で溶いてかき混ぜていくと、抹茶を思わせる深い緑色の液体ができあがりました。この液体を鍋に空け水と混合させます。 さて、実はここまで懸念しつつも目をそらしていたことがあります。それが素材のひとつである「星の恵み」というアイテム。 アイテムの説明欄には抽象的な説明が書いてあるのみ。粉状のものが小ビンに入っていることだけはわかりますが、これはいったい何なのでしょうか…。 「恵み」という言葉の響きから、おそらく海の恵みである「塩」のことだろうと筆者は判断。レシピには“星の恵み×2”とあるのでふたつまみ程度が妥当でしょう。 ここから蓋をして弱火から中火で15分ほどで煮出していきます。 熱し終えた鍋がこちら。色は先ほどと同様、お茶に似ていますね。セージは強い香りを持ったハーブですが、この時点で香りはほとんど立ち昇ってきません。 筆者が前もって用意したポーション的な雰囲気を持つビンに、中身を注ぎ込めば…… ポーション、完成。 完成しました!これがポーション…だいぶそれらしい仕上がりになったのではないでしょうか…! ポーションと比較。色味は作中のものとまったく異なるようですが、これはきっと『FF7 リバース』で神羅カンパニーが製造しているビンが青色だからに違いありません。 かつて『FF7』10周年の時には、神羅カンパニー製ポーションを再現した商品が限定販売されたことがありました。中の液体は無色透明となっていましたが、あれはおそらくいっとき出回った無色透明コーラのようなもので、きっと神羅カンパニーが自社の技術を誇示するために作ったのでしょう。 ポーションの薬効を試してみる さて、では肝心のポーションの薬効や味はどうなのでしょうか。今回は筆者自身を実験体にその効力を試してみたいと思います。 飲んだ時の率直な感想は「これ白湯?」というものでした。ふたつまみ程度の塩ではしょっぱくもなく、色味やセージの葉の香りから、なんとなくほろ苦い液体を想像していたのですが驚くほど味がしません。 飲んで少し経ってから「どこか遠くからセージの声が聞こえるような……空耳か……」くらいの感じです。同量の水に対し、5枚ではなく5房のセージを入れていたらまた事情は変わってきたかもしれませんね。 ただ、当たり前ですが悪い気分にはならず、漠然と身体に良さそうではあります。でもそれって白湯も同じなのでは、と思わないでもないですが。 筆者はかつて『FINALFANTASY XII』がリリースされた際に販売されたポーションを友人から飲ませてもらったことがありますが、そちらはなかなか甘味料のパンチが効いた味付けだったように記憶しています。この自家製ポーションの味はその対極にあるといえるでしょう。ちなみに販売されていたポーションの原料には、セージやマジョラムといったハーブも含まれていたようです。 続いて、ポーションの効力を更にアップさせたメガポーションを作成します! <cms-pagelink data-text=”回復量はポーションの4倍超。メガポーションをクラフト!” data-page=”2” data-class=”center”></cms-pagelink> 回復量はポーションの4倍超。メガポーションをクラフト! さて、HPのみを回復させるポーション系アイテムとしては、ポーションより2ランク上のメガポーション。HPを1500回復させます。作成に必要な素材は以下の通りです。 オレガノ×5 セージ×5 星の神秘×5 一見するとポーションとさほど材料が変わらないように思えますが、必要な素材の数で言えば1ランク下のハイポーションのほうが多くなっています。そんななか、メガポーションには唯一オレガノが使われているという点は見逃せません。 オレガノをすりこぎで擦っていきます。セージに比べて鮮やかな色をしているのがわかるでしょうか? セージは擦ってもあまり香りがしなかったのに対して、オレガノは擦ることでより強いスモーキーな香りを放ちます。 セージを入れた液体と混合させます。さて、ポーションでは「星の恵み」という素材が必要でしたが、今回は「星の神秘」というアイテムが必要になります。 またもや筆者を悩ませる謎の粉。ポーションでは「恵み」ということで塩を使いましたが、「神秘」ともなると想像もつきません。塩の上位アイテムということでしょうか。 「おそらく……これだろう」 塩よりも高値で取引される、この某調味料ならば……きっとその位置にふさわしいでしょう。なぜこんな風にうま味を感じるのか、どうやって作られているのか、パッと思いつきづらいあたり「神秘」と言えないこともありません。星が生み出したかどうかはともかく。 鍋を熱して15分程度、原料が多いためポーションよりも色が濃く、また若干泡立っています。 メガポーション、完成。 メガポーションの完成です! 作成してみてすぐに分かるポーションとの違いは、その香りが明らかに強いこと。昇り立つ湯気からそこはかとなくイタリア料理の記憶が呼び起こされます。 メガポーションの薬効を試してみる 「お……スープだね、これは」 おそらく某調味料のおかげだと思いますが、味はしっかり調っていてキレを感じます。また、オレガノ特有のスパイスや燻製を思わせるが香りが鼻を抜けます。 ポーションが食後の口直しの一杯だとすれば、こちらは景気づけのための一杯といったところでしょうか。パンを浸しても良さそうです。静かに癒しを与えるポーションに対して、こちらはガツンとした強壮剤という趣でした。HP1500回復の効力は伊達ではありません。 それでは続いて、もはや飲み物ではない「やまびこえんまく」を作成していきます。 <cms-pagelink data-text=”沈黙を破る煙、やまびこえんまくをクラフト!” data-page=”3” data-class=”center”></cms-pagelink> 沈黙を破る煙、やまびこえんまくをクラフト! やまびこえんまくは魔法が使えなくなる沈黙状態を回復させるアイテム。『FF7 リバース』ではスプレーのような形状をしていますが、ここから煙を吹き出して使うのでしょうか。素材は以下の通りです。 ミストシード×2 月桂樹の葉×1 マジョラム×1 セージ、オレガノ、マジョラムは前回のハーブ園で苗を購入してきました。一方、月桂樹から葉を採取する場合は成長した樹を入手する必要があるため、今回はスーパーで乾燥ローリエを購入しました。しかしこれほど葉の大きさが違い、加工状態も異なるとなると、マジョラムの香りが感じられなくなりそうな予感がします。 案の定、素材を入れたこの時点でマジョラムの繊細な香りを月桂樹の葉が上回っています。乾燥させた月桂樹の葉はそのままだと甘さに加え「い草」を思わせる芳香があり、ちぎってみるとより甘さが増してコーラのようなスパイシーな香りを強く感じました。 さて、ここで問題になるのが「ミストシード」。なんらかの実であることは確かですが、私たちの世界でこれに相当するものはあるのでしょうか。 黒ずんだ外見から、おそらく黒コショウがそれに近いのではないかと筆者は判断。「炭酸ガスを噴出し~」と説明にありますが、あいにくコショウにはそういった効果はありません。ただ、クラフトコーラの素材として用いられることはあるので、それが取り違えられた可能性も否定できません。 ごく少量の水を加えて材料を混ぜ合わせます。コショウを加えたこともあり、スパイシーな香りが増幅しています。肉料理や魚料理の臭みを消すのに向いていそうですが、今回は食べるのが目的ではありません。 やまびこえんまく、完成。 自家製やまびこえんまくが完成しました!『FF7 リバース』のようにスプレータイプではありませんが、はたして同様の効果を得られるのでしょうか。 やまびこえんまくの薬効を試してみる やまびこえんまくは煙を噴出させることで薬効を得る、となればお香のように焚いて使うのが自然な発想。おそらく『FF7 リバース』のものは携帯性の確保に加え、簡便に使用できるようにスプレータイプになっているのでしょう。 煙に顔を近づけてみると、ゴホゴホとむせ返ってしまいました。主にコショウが作用しているのでしょうが、煙が鼻腔を刺激することで否応なしに声が出てしまいます。なるほどたしかにこれならば沈黙状態を無理やりにでも直せそうです。コショウといえばくしゃみが出ることで知られていますが、これにはピペリンという成分が関係しているらしく、スプレータイプのものはこうした成分を抽出したものが入っているのかもしれません。 あまりにコショウの刺激が強かったので、試しに月桂樹の葉を集めて焚いてみると、こちらはむせ返らずやや甘い干し草のような香りが立ち昇ります。匂い袋にして衣服に香りを付けたり、体に擦り込んでみるのもアリかもしれないと思いました。今回作成したアイテムの中でも、『FF7 リバース』と同等の薬効を得られるという意味ではこれが一番かもしれません。 それではいよいよ最後のアイテムクラフト。作成するのはエーテルです。 <cms-pagelink data-text=”作成するのは意外と骨が折れる?エーテルをクラフト!” data-page=”4” data-class=”center”></cms-pagelink> 作成するのは意外と骨が折れる?エーテルをクラフト! MPを20回復させる効果を持ったエーテル。『FF』シリーズではポーション系アイテムよりも貴重なイメージがあり、『FF7 リバース』作中でもショップ在庫が少ないことから貴重な品であることが窺えます。必要な素材は以下の通り。 セージ×20 ケモノの爪×5 エーテルオニオン×3 星の実り×3 クラフトに必要なアイテムはポーションと比べて明らかに多く、セージに至っては4倍の開きがあります。 ほとんどひと房と言っていいほどの量のセージ。用意したセージ苗の半分以上をエーテルで使用しました。 エーテルを作成するためにエーテルを吸ったオニオンを用意するというのは、どうにもパラドックスめいているように思えます。おそらくは古代ギリシアに由来の、元素としてのエーテルで育ったタマネギがあり、そこから作られる薬もまたエーテルと言い慣わされているのでしょう。 筆者が用意したのは、スーパーで買ってきた普通のタマネギ。ひと玉およそ70円。エーテルを含有していないため力不足かもしれませんが、古来から薬用として用いられてきた食材でもあります。 さて、これまでの流れで察せられると思いますが、相変わらずクラフトの障壁として立ちはだかる「星の〇〇」シリーズ。今回は「星の実り」というアイテムが必要になりますが、いったい「実り」とはなんなのでしょうか。「星」、そして「実り」……。 もしや「星の実り」とは「星型の実」のことを示しているのではないか?そう類推した筆者はスターアニス(八角)をセレクト。メニュー画面でこそ粉末状になっていますが、これはきっと粉状に加工されたものなのでしょう。スターアニスはトウシキミの果実で、中国料理をはじめ様々な料理のスパイスとして、また生薬としても用いられています。独特の甘い香りが特徴で、これを料理に入れることで本格的な中国料理の風味になります。 さて、最後の材料はケモノの爪。筆者に狩りでもしてこいと言わんばかりのまごうことなきケモノの爪ですが、どうやって手に入れたらいいのでしょう。一瞬、「鷹の爪(トウガラシ)かな?」と思いましたが、アイテムアイコンはどうみても骨の形。ケモノの骨ならば比較的容易に入手できそうなのですが。いや、もしかすると……。 筆者には心当たりがありました。安価で手に入る鶏の足、通称「モミジ」が、ラーメンスープの出汁に使われたり、海外あるいは日本でも地域によっては食されているらしい……と。 「中国系の食材を取り扱う店舗ならばきっとあるはず」――そう踏んで、すぐさま電話を掛ける筆者。お店の方に「モミジありますか?」と尋ねたところ「あるよ。」という回答が得られたため、現場に急行。こうして無事「ケモノの爪」を確保できたのでした。 すべての素材がようやく揃いました。いよいよエーテルの作成です。 さて、せっかく手に入れた「ケモノの爪」ですが、爪の部分を粉末にするのは難しいと判断し、「モミジ」ごと使用することに。ただしかなり鋭く、調理には危険が伴います。 一般的なもみじの調理法としては水洗い、あるいは茹でた後に、指先から爪を落とす工程が入るようです。今回はエーテルの素材が爪そのものであることを鑑み、ケガをしない程度に爪を丸めた状態にして使用することにしました。 加工後のモミジを下茹でし、浮いてきたアクをとります。 ここでとれたスープはそのまま使用せず、茹でこぼします。今回このスープは使用しませんが、別の容器に保存して冷ますと煮凝りになります。 あとはセージ、スターアニス、タマネギといった全ての素材を鍋に空け、水を加えて蓋をし、弱火で1時間ほど熱していきます。 エーテル作成中は終始、スターアニスの甘い香りがキッチンを漂っていました。筆者は本記事の前篇を執筆しながら、加熱が終わるのを待ちます。 そして1時間後……。 エーテル、完成。 エーテルの完成です! 素材の調達から作成に至るまで、これまでのアイテムで一番骨が折れました。 エーテルの薬効を試してみる さて、これだけ手間ひま掛けたエーテル……はたしてMPは回復されるのでしょうか。 筆者は魔法が使えないのでわかりかねますが、確かにこれなら気力・精神ともに回復しそうな滋味あふれる味わいです。 まずはじめに感じるスターアニスの甘い香り、続いてモミジから染み出た鶏のうま味、溶け込んだタマネギのまろやかさ、そして最後にセージの爽やかな香りが抜けていく……全ての素材が完全に調和しています。 言うなればこの自家製エーテルは、参鶏湯(サムゲタン)やチキンスープを思わせる体に効く薬膳的なもの。エーテルを作っていたら薬膳に行きつく、医食同源とはまさにこのことですね。 ひたすらアイテムクラフトをしていたらすっかり日が暮れてしまいました。そろそろお腹も空いてきたので、今晩は夕食にエーテルを頂きたいと思います。 クラフトを終えて――素材から幻想を具現化する こうして全てのアイテムクラフトを終えた筆者。『FF7 リバース』というゲームをきっかけに外に出向き、素材を知り、集め、考え、それを具現化するという行為はいささか突飛に思えたかもしれません。 しかし何をどうしたら『FF』のアイテムらしくなるのか、はたして効果は適切なのか、そのように頭を悩ませながら作っていく過程はとても得がたい経験でした。おかげでハーブの薬効が歴史的にどのように用いられてきたのか、なぜアイテムクラフトの素材になっているのか分かった気がします。 セージ、マジョラム、オレガノ、月桂樹……こうした具体的な物が我々のすぐそばにあること、それが筆者の抱えた幻想(妄想?)を具現化させる入り口でした。 読者のみなさんも少なからずこうした経験があるのではないでしょうか。もしよければぜひコメントなどで聞かせてください!
Game*Spark 林與五右衛門
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