<高校野球>サッカー部に負けぬ 静岡・清水桜が丘 センバツ21世紀枠候補
3月23日に兵庫県西宮市の阪神甲子園球場で開幕する第91回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催、朝日新聞社後援、阪神甲子園球場特別協力)の出場32校が今月25日、選考委員会で決まる。そのうちの3校は、困難条件克服や地域貢献など他校の模範となるべき要素を選考条件に加えた「21世紀枠」で選ばれる。 【写真で振り返る歴代出場校】 ◇意見出し合い、課題を克服 ノックバットを握る曲田(きょくた)雄三監督(35)に向かって内野に散った東海地区候補校・清水桜が丘の選手たちが大声を上げ、打球を呼ぶ。三塁手、遊撃手は背後でサッカー部が練習試合の真っ最中とあって、一歩も後退はできない。それでも、三塁手の小川允羅(ちから)主将(2年)は「これが当たり前。練習を制限されている意識はない」と笑う。 静岡市立清水商と県立庵原が統合して2013年に創立した市立校だ。清水商サッカー部は全国高校選手権を3度制し、数々のトップ選手を輩出した。野球部も清水商で3度の甲子園を経験しているとはいえ、共用するグラウンドは、大所帯のサッカー部が優先。平日は午後6時まで外野全面をサッカー部が使い、8時からは地域団体に貸し出すため、フリー打撃などの練習は満足にできない。 厳しい練習環境の克服に一役買ったのは、数年前から学校を挙げて取り組む文部科学省推進の「アクティブラーニング」だ。主体的に考え、他者との対話を通じて課題に取り組む姿勢を、曲田監督が野球にも落とし込んだ。練習では一つのメニューが終わる度に選手が意見を出し合って「振り返り」を行い、課題を洗い出して克服の道筋を探っていく。 その姿勢は、試合にも生きた。「苦しい展開の時に選手に『どうしよう?』と尋ねると、すぐに選手たちから打開策が返ってくる」と曲田監督。意思統一できれば、チームは一丸となる。昨秋の静岡大会準々決勝では、シーソーゲームの末に東海大静岡翔洋にサヨナラ勝ち。勢いに乗って準優勝し、清水桜が丘としては初めて東海大会に駒を進めた。 最近、選手の話し合いから生まれた目標がある。「甲子園に呼んでもらえるチームになろう」。小川は言う。「意識を高く持ち、考えて野球に打ち込んでいれば誰からも認められるチームになるし、自然と結果もついてくると思う」。上意下達ではない、選手たちの主体性を重んじる高校野球を実践している。【平本泰章】