堀江貴文が「M-1グランプリの高視聴率は日本人の言語能力の低さを反映している」と断言するワケ
M-1の高視聴率は日本人の言語能力の低さを反映
さらにM-1は漫才界の最高峰の大会であり、より洗練された「心地よい裏切り」を競う。でも洗練されていればいるほどテクニカルになり、その構造の分析や予想がしやすくなる。言語能力の高い人からすると、ますます楽しめなくなるのだ。 お笑い好きなら、若手や売れない芸人のネタがつまらないと感じることがよくあるはずだ。それはたくさんのお笑いを見てきたことで培った経験値により、彼らのボケやオチが予測できるという理由が大きい。私にとってはM-1のファイナリストであってもそんな状態なのである。 でもその一方で、相変わらずM-1は大人気。毎年爆笑をかっさらっている。裏を返すと、日本には言語能力の高い人が少ないという証拠なのかもしれない。その高視聴率は、日本人の言語能力の低さの反映だとも考えられる。 誤解のないように言っておくが、私はお笑いが嫌いなわけではない。「そんなの関係ねぇ」で一世を風靡した小島よしおさんや、スピードワゴンの井戸田潤さんが扮するハンバーグ師匠のネタは大好きだ。 彼らのネタは、M-1で評価される「心地よい裏切り」の構造とは違うが、それがよい。むしろ漫才の型にはまらない、自由な発想から生まれた予想できない笑いのほうが、私のような人間の好みには合う。
とにかく明るい安村の活躍
芸人にとって、M-1グランプリはその後の活躍のために必要な場だとは理解している。しかし、M-1的なお笑いだけでは、お笑い界は頭打ちになるのではないかとも思う。 実際に、日本の芸で世界に通用しているのは、M-1グランプリでは絶対に評価されないようなネタだ。 たとえば、とにかく明るい安村さんが、イギリスの人気テレビ番組「ブリテンズ・ゴット・タレント」の会場で大ウケしたことを知っている人も多いだろう。 その後、アメリカの人気テレビ番組「アメリカズ・ゴット・タレント」(AGT)にも出演し、ここでも大爆笑をかっさらった。また、チョコレートプラネット扮するTT兄弟もAGTの会場を爆笑の渦に巻き込んだ。 彼らの芸は言葉の壁を超え、世界に通用したのだ。今後、あえてM-1グランプリ的な笑いを追求しない芸人こそが、これからの日本のお笑いを支えていく気がしている。 ※1 日刊スポーツ「『M-1グランプリ』視聴率は関東17.2%、関西28.0% 昨年は30.1%」(2023 年12月25日)
---------- 堀江貴文(ほりえ たかふみ) 1972年、福岡県生まれ。実業家。ロケットエンジンの開発や、スマホアプリのプロデュース、また予防医療普及協会理事として予防医療を啓蒙するなど、幅広い分野で活動中。会員制サロン「堀江貴文イノベーション大学校(HIU)」では、1,500名近い会員とともに多彩なプロジェクトを展開。『ゼロ』(ダイヤモンド社)、『多動力』(幻冬舎)、『時間革命』(朝日新聞出版)、『203510年後のニッポン』(徳間書店)など著書多数。 ----------
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