キャリアの挫折を成功に変える3つの行動
■挫折を経験すると、前向きな思考を得られる 多くの人はキャリアのどこかの時点で挫折を経験する。昇進を見送られたり、望んでいた仕事に就けなかったり、退職を求められたりすることさえあるかもしれない。そのような経験によって自信が揺らぎ、自分の価値に疑問が生じるため、挫折を避けようとするのは、本能的な反応である。しかし、明らかに否定的な側面に注目するあまり、挫折がもたらす一筋の光明を見失っているとしたらどうだろうか。 研究から、挫折は短期的には破壊的影響をもたらすが、思いがけない形でキャリアを刺激することが明らかになっている。2017年に、筆者の一人であるマイアホーファーは、トロント大学ロットマンスクール・オブ・マネジメントの教授であるヒュー・ガンズとの共著で、人的資源、組織、経営の研究者らがキャリア研究に関して繰り広げた議論の全体像をまとめた。どの分野においても強調されているのは、キャリアは本質的に生涯にわたる行程であると理解するのが最も適切であり、回り道や型通りではない経路は当然あるし、その中には価値あるものも多いということだ。 最近、筆者ら2人が実施した調査も、この考察を裏づけている。2023年に発表したこの調査では、販売、製造、設計デザイン、接客サービスの各業種の初級の職位にある42人を面接し、挫折を経験した人と、同様の立場だが挫折を経験していない人を比較した。キャリアの選択や、利用可能だと思う機会について尋ねたところ、挫折を経験した人は、当初はレールから外れたと感じたものの、物の見方が前向きに変化していた。挫折のショックをきっかけに、内なる自己に誠実になってキャリアを再考し、再構築したおかげで、以前よりも成功していた。一方、キャリアの挫折の経験がない人の大部分は、「安全な」選択に走り、型通りの道を進んでいた。より幅広いキャリアの機会は、魅力的に感じられなかったか、機会そのものが見えなかったのである。 もしあなたも挫折を経験したことがあるなら、次の3つを実践することで、さらに成長できるだろう。 ■キャリアの目標が現在の志と本当に合致するかどうかを検討する まず、いまいる場所へとあなたを導いた決断は、いまより未熟な過去のあなたが下したものであることを認識しよう。一歩引いて考えてみるとよい。スキルも知識も向上し、キャリアの成功とは何かをより深く理解している現在のあなたにとって、かつての目標がいまなお適切だろうか。いまの自分にとって大切なものをよりよく反映させるために、どのように目標を更新したらよいだろうか。 次に、修正した目標を達成するためには何が必要かを熟考しよう。そうすることで、次のポジションに求めるものを見極めることができる。 作家のアンドレア・レドモンドとパトリシア・クリサフッリの共著Comebacks(未訳)には、上司と意見が対立して会社から退職を求められ、一時期自分を問い直す必要性に迫られたエグゼクティブの話が出てくる。彼はこの件を通して、自分に必要なのはさらに自律性の高い役職だと気づいた。かつて彼のメンターだった上司が彼の決定にたびたび介入し、2人の間に亀裂を生じさせたことに思い至ったのである。二度と制約を受けまいと心に誓った彼は、仕事の面接では、具体的にどの程度の意思決定の権限が与えられるポジションなのかを必ずはっきりさせ、高い自律性を求めてじっくりと交渉した。最終的にそのエグゼクティブ、すなわち現在JPモルガン・チェースCEOを務めるジェームズ・ダイモンは、当時、方向転換を求めていたバンクワンの経営の舵を取るというオファーを受諾した。数年後、バンクワンはJPモルガンに買収され、ダイモンはその後まもなく、合併企業のCEOに就任したのである。