西武・隅田から本塁打、元甲子園球児が18年の野球人生に終止符
今年10月、吉本孝祐は18年間の野球人生に終止符を打った。 彦根東時代は、甲子園(第99回大会)を経験した。今から7年前だ。甲子園開幕戦となった初戦の波佐見戦では、現在埼玉西武ライオンズで活躍する隅田知一郎から本塁打を放った。投手としては、慶応大からトヨタ自動車に入社した増井翔太がエースナンバーを背負っていたため登板機会がなかったが、甲子園の2試合で3安打を記録。 【トーナメント表】明治神宮大会・高校の部 組み合わせ その後、筑波大に進学した吉本は、川村卓監督の指導のもと、自ら球速アップの研究を重ね、入学時から球速10キロアップの147キロ右腕となった。 「球速を上げるためにはどういうトレーニングが必要だとか、川村監督から速い投手の特徴を教えていただいたり、プロに行くためにはどれくらいの数字が必要なのか理解した上で練習に取り組めたのでとても充実した4年間でした」と振り返る。 その後、一般就職の道は選ばず、プロ野球選手の夢を追いかけることに決めると、企業チーム・オールフロンティアに電話をかけ、練習参加を申し込んだ。 そして翌年、2022年に新卒でオールフロンティアに入社。同社は様々な業種の事業を手掛ける企業だが、吉本は車の販売店勤務となった。 平日の日中は店頭に立ち、お客様への車販売の営業を行い、夕方にはグラウンドに向かい練習に打ち込む生活を続けてきた。 「大学の同期たちは体育の教員になったり、一般就職したりしましたが、自分の中ではまだ挑戦をしたかったんです。ただ社会人野球を2年間経験して、自分が思い描いていた成長曲線とは、かけ離れていると感じました」 今年8月のJABA長野大会ではそう話していた吉本だったが、今シーズンは公式戦7試合に登板するも、昨シーズン以上の結果が残せなかった。 「今年はチームに貢献できるピッチングができませんでした。プロ野球選手を目指すために、社会人野球でプレーするのは2~3年を期限として設けてきたので、そのタイミングがきたと思っています。今の自分の能力を考えて今シーズンでの引退を決めました」 吉本の声に悔いはなかった。 「僕はこれまでの人生を野球に捧げてきました。野球に没頭してきたことで、たくさんの経験をし、いい出会いもありました、これから野球から離れて、仕事に取り組む上でも、仕事に熱中して、無我夢中で頑張れるような自分で在り続けたいと思っています。 僕は頭を使うのが好きなので、どうやったら売り上げが伸びるのかとか、数字を見る仕事に興味があるので、ロジックを組み立てて考えるような仕事にもチャレンジしてみたいですね」 大学時代に自らピッチングを研究し、球速10キロアップを遂げた吉本らしい言葉だ。きっと、これからの人生でも、自分で掲げた目標に向かって大きく、強く羽ばたいていくのだろう。
安田未由