イラン最高指導者、イスラエルの攻撃を「誇張や過小評価すべきでない」 対応めぐり慎重姿勢
イランの最高指導者アリ・ハメネイ師は27日、前日未明のイランに対するイスラエルの攻撃について「誇張や過小評価」をすべきではないと述べ、今後の対応をめぐり慎重な姿勢をみせた。 ハメネイ師は攻撃後初めての公式コメントで、「イラン国民の力と意志をどのようにイスラエル政権に伝え、我が国民と我が国の利益にかなう行動を取るかは、当局次第だ」とも述べた。 イスラエルによる26日未明の攻撃では、少なくとも4人のイラン兵が死亡している。 イランのマスード・ペゼシュキアン大統領はこの攻撃について、イランは「適切な対応を取る」としつつ、イラン政府は戦争を望んではいないとも述べた。そのうえで最高指導者ハメネイ師の発言に倣い、「我々は戦争を望んではいないが、国民と国の権利を守る」と強調した。 イランは10月1日にイスラエルに向けて200発近くの弾道ミサイルを発射した。イスラエルはその報復として、26日未明にイランの複数地域にある軍事施設を標的に攻撃を実施したと発表した。 イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は27日、イランの防空システムとミサイル製造システムを無効化したと表明。今回の攻撃は「イランの防衛能力とミサイル製造能力に深刻なダメージを与えた」とした。 「正確かつ強力な攻撃はその目的を達成した」と、ネタニヤフ氏は昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル南部襲撃の犠牲者を追悼する式典で述べた。ハマスはイランの支援を受けている。 「イラン政権は単純な原則を理解しなければならない。我々に危害を加える者には誰であれ、我々も危害を加えるということを」 これに対してイランの政府筋は、攻撃による影響はそれほどのものではないという主張を続けている。イスラエルが発射した大半のミサイルは迎撃され、残りのミサイルはイランの防空システムに限定的な損傷しか与えなかったという。 イスラエルの攻撃は一部の観測筋の予想よりも限定的なものだった。アメリカはイスラエルに対し、イランの石油施設や核施設を攻撃しないよう公に圧力をかけていた。イスラエル政府は今回、その忠告を聞き入れたと思われる。 イランのアッバス・アラグチ外相は27日、同国は攻撃の数時間前に、攻撃が差し迫っていることを示す「兆候を受け取っていた」と語った。 「我々はあの夜に攻撃が起こる可能性を示す兆候を(25日)夕から受け取っていた」と、アラグチ外相は記者団に述べた。これ以上の詳細は明かさなかった。 中東諸国間のエスカレーション(状況激化)が全面的な地域戦争を引き起こしかねないと懸念している西側諸国はイランに対し、エスカレーションの連鎖を断ち切るため、イスラエルの攻撃に報復しないよう求めている。 イラン・メディアは日常生活がいつも通り続いている様子をとらえた映像を報じ、被害が「限定的」だったことを勝利として伝えている。これはイラン国民を安心させるためのものだと、複数のアナリストは指摘する。 ■イラン支援の武装勢力との戦闘続く レバノンではイスラエルと、イランが支援するイスラム教シーア派組織ヒズボラの戦闘が続いた。 レバノン南部の町シドンでは27日、イスラエルの空爆があり、少なくとも8人が死亡したと、レバノンの地元当局は発表した。レバノンは27日遅く、同国南部へのイスラエルの空爆で少なくとも21人が死亡したと明らかにした。 パレスチナ・ガザ地区では、北部のアル・シャティ難民キャンプにイスラエルの攻撃があり、避難所として使用されていた学校に着弾。9人が死亡したとパレスチナ当局が発表した。 パレスチナのメディアやロイター通信はパレスチナ自治政府関係者の話として、死者のうち3人はパレスチナ人ジャーナリストだと報じた。 イスラエル・テルアヴィヴ北部の軍事基地近くでは、バス停にトラック1台が衝突し、男性1人が死亡、少なくとも30人が負傷した。当局はテロの可能性があるとしている。 こうした中、エジプトのアブドゥル・ファタ・シシ大統領は27日、ガザでの2日間の戦闘休止案を提示した。これには、イスラエル人の人質4人の解放と、イスラエルの刑務所にいるパレスチナ人受刑者の一部の釈放が含まれる。 シシ大統領は、このような一時休戦を実施してから10日以内に、より恒久的な休戦のための協議を再開すべきだとしている。 しかし、ハマス幹部のサミ・アブ・ズフリ氏はBBCアラビア語に対し、自分たちが求める休戦案の条件に変わりはないと語った。イスラエルはハマスが提示した休戦条件を数カ月にわたり拒否している。 同幹部は自分たちが今も、完全な停戦、イスラエル軍がガザから完全撤退すること、そして重罪で収監されているパレスチナ人受刑者の釈放を求めていると述べた。 「これらの条件を保証しない合意には、何の価値もない」とズフリ氏は強調した。 イランの支援を受けるハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害したほか、251人を人質に取った。イスラエルは直ちにパレスチナ・ガザ地区でハマス壊滅作戦を開始した。ハマス運営のガザ保健省によると、ガザ地区ではこれまでに4万2924人が殺害された。 ハマスと同様にイランの支援を受けるヒズボラが、ハマスのイスラエル襲撃の翌日にハマスへの連帯を示すためだとしてイスラエルを攻撃したことで、イスラエルとヒズボラの戦闘は始まった。 (英語記事 Iran leader says Israeli attack should not be 'exaggerated or downplayed')
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