『ブギウギ』小雪×水上恒司が口論する“ほんまの家族”の意味 舞台は愛助不在で開幕へ
『ブギウギ』(NHK総合)第82話では、スズ子(趣里)と愛助(水上恒司)が離れ離れのまま、舞台「ジャズカルメン」の幕が上がる。 【写真】大きくなったお腹を愛おしそうに触るスズ子(趣里) 愛助が大阪の病院に移ってから1カ月が経った。スズ子は愛助のいない部屋で、静かなお正月を迎える。静か、と言っても一人ではない。マネージャーである山下(近藤芳正)が何かと世話を焼いてくれるし、舞台の稽古場には看護師の東(友近)が付き添ってくれて体調を管理してくれている。 スズ子も心強いはずだ。過去を振り返っても、彼女は本当に良縁に恵まれている。でも、きっとその縁はスズ子自身が引き寄せているものなのだろう。どんな状況でも弱音を吐かない健気な姿を見ていたら、周りが何かをしてあげたくなるのも分かる気がした。守るべきものが愛助のほかにもう一人できて、より輝きを増しているスズ子はプロデューサーの小島(田村裕)も魅了する。 今回から登場となった田村は言うまでもないが、人気情報番組『ラヴィット!』(TBS系)のMCでお馴染み、川島明の相方。お笑いコンビ「麒麟」として吉本興業に所属している。他にも本作には、なだぎ武、ジャルジャルの後藤淳平と福徳秀介、メッセンジャー黒田有、友近といった個性豊かな吉本興業所属の芸人が多数出演し、物語を盛り上げてきた。 その吉本興業をモチーフにしたとされる村山興業の社長・トミ(小雪)は相変わらずスズ子と愛助の結婚には反対したまま。愛助が再度説得を試みるも、トミは頑なに自分の考えを曲げようとはせず、ぽろっと「(スズ子に)ほんまの家族になってほしかっただけや」と本音をこぼす。“ほんまの家族”……スズ子の出生の秘密が明らかになった第5週でも印象的に使われたワードが、ここにきて改めて飛び出してきた。 スズ子は両親の梅吉(柳葉敏郎)やツヤ(水川あさみ)、弟の六郎(黒崎煌代)と血の繋がりはない。だけど、そんなのはなくとも4人は強い絆で結ばれた“ほんまの家族”だった。血の繋がりだけが人と人を家族たらしめるわけではないことはトミもよく分かっている。トミも赤の他人である社員や芸人たちと一から関係を築き、家族になってきたのだから。そんな彼女が家族の条件として挙げるのが、「同じ方向を向いている」ことだ。同じ夢を叶えるために力を合わせ、互いを支え合う。そうでないなら、家族でいる意味がないと考えるトミに愛助は真正面から反論する。 「家族でも、違う人間やろ」 かつて上京を反対していたツヤが最終的にはスズ子を笑顔で送り出した理由が、愛助の言葉に詰まっていた。ツヤにとっても、愛助にとってもスズ子の大事な“ほんまの家族”。だけど、2人ともスズ子を自分の所有物ではなく、ひとりの人間として尊重しているのだ。 それにスズ子は歌で、愛助は笑いで、手段は違えど、世の中を明るくしたいという願いは共通している。根っこの部分で繋がっているから、2人の心はバラバラにならない。それは離れている今も同じで、愛助とスズ子は互いの存在に支えられている。そんな中、幕を開けた舞台「ジャズカルメン」は圧巻だった。ゴシップ記者の鮫島(みのすけ)が思わず「やるねえ」と溢してしまうほど、舞台上で輝くスズ子は愛助の存在あってこそなのである。
苫とり子