とある英国人がハマるマイクロカー ウィリアム・サイクロへ試乗 運転には鉄の心臓が必要!
マイクロカーの運転には鉄の心臓が必要
「順調に走っていたんですが、片道2車線の高速道路で故障。路肩へクルマを寄せると、消防車が偶然近づいて来たんですよ。隊員が車線規制してくださって、助かりました」 「その1人から、クルマは諦めた方が良いと忠告されました。もちろん、わたしは拒否して、ロードサービスへ電話。見てもらうと燃料供給のパイプが外れていたのが原因で、すぐに復調したんです」 「ところが心配だったのか、ロードサービスと消防車は、ブルックランズまで追走してくださいました。迷惑をかけてしまいましたね・・」 小児看護に携わっているだけあって、不測の事態には耐性があるらしい。サイクロを運転するには、鉄の心臓が必要だと笑う。 「最高速は32km/hがやっと。走っていてクラクションは珍しくないですし、ドライバーの中には、怒鳴ってくる人もいます。でも、殆どの人は好意的に見てくれているようです。ガス欠になっても、足漕ぎペダルが付いているので、自力で動かせるんですよ」 筆者が取材を申し込むと、快く自宅へお招きいただいた。サイクロへ試乗させてくれるという。 小さなガレージには、1974年式のミニ・コムテッセが停まっていた。見た目はサイクロと似たシングルシーターだが、左側はガルウイングドア。パブの駐車場で発見し、500ポンドで買ったそうだ。 もう1台、1970年式のSEABフリッパーもある。これは四輪車で、2023年にコレクターの遺品として、1200ポンドで譲り受けたとのこと。
グレートブリテン島を巡り寄付を集める計画
それでも1番チャーミングに見えるのは、イエローのサイクロ。1976年式で、今でも公道走行できる世界唯一の個体だと、パレットは考えている。最近、2万ポンド(約384万円)で売って欲しいと連絡があったが、彼女は断ったらしい。 小さなステアリングホイールの後ろへ、筆者の身体を押し込む。ノブを引いてボタンを押し、エンジン始動。アクセルペダルを踏むと、ゆったり発進してくれた。 加速はのんびりだが、すぐに25km/hくらいでの巡航に落ち着く。エンジンは、想像に反して滑らかで静か。思いのほか、スピードも乗せやすい。 ステアリングホイールの反応は、驚くほどダイレクト。笑ってしまうほど、クルクルと小回りが利く。ところが、調子に乗って走っていると、速度抑止用のスピードバンプで横転しそうになった。 「そのことを、説明し忘れていましたね」。サイクロから降りて報告したら、マイクロカーを愛するパレットが笑顔で教えてくれた。とはいえ、運転はとても楽しい。 「週末は、ホームレスの支援団体で活動しているんです。チャリティーとしてグレートブリテン島を巡って、寄付を集めたいと考えています。小さいですが、車中泊しながら」
番外編:バブルカー&マイクロカー博物館
英国には、1950年代のバブルカーや、マイクロカーを専門にコレクションした、小さな博物館「バブルカー・ミュージアム」がある。2階建てで、英国のメーカーだけでなく、フランスとドイツのモデルも展示されている。 実際に乗れる、バブルカーもあるという。英国へ旅行された際に、立ち寄ってみてはいかがだろう。詳細:www.bubblecarmuseum.co.uk
ジョン・エバンス(執筆) ジャック・ハリソン(撮影) 中嶋健治(翻訳)