松尾潔・日本版DBS法成立に「加害者の治療も同時に推し進めることが必要」
学校や保育園というのは、親にとっては子供を預ける先として「最も安全である」という信頼のもとに、長い時間をそこに託しているわけですが、そこで指導者の立場にある人が、よからぬ心持ちとか、そういう行動の癖があったりすると思うと、親の立場としてゾッとしてしまいます。 ■法律の成立と両輪で加害者への治療の推進も 犯罪を未然に防ぐために、登録・確認する制度ですが、犯歴は最長20年前までさかのぼるとされています。拘禁刑で実刑を受けている場合は、執行が終了して20年、執行猶予の場合は裁判の確定日から10年、罰金刑の場合も刑の執行終了から10年というように段階があります。 では20年と1日が過ぎていたら、その人は野に放たれるのかという不安も当然湧きますし、20年とか10年という数字にどういう根拠があるんだろうという話にもなりますよね。 ですから法律を成立させたからといって、それで終わりではなく、国全体で性加害を繰り返す人の治療を推し進めていくということが必要になってきます。 性加害の要因は複雑です。もちろん加害者を擁護するようなことを言うつもりは一切ありませんが、性犯罪に限らず、何かの過ちを犯してしまう人は、幼少期にトラウマとなるような経験をしていたり、家庭の影響があって、それらが複合的な要因として絡み合ったりしていることが多いのです。これは社会全体で取り組まないといけないということになります。 ■完璧な法律が出来たわけではないという意識を持つべき 福岡県には性暴力根絶条例というものがあり、4年前から性暴力の加害者を対象とした相談窓口ができています。「痴漢や盗撮をやめたいけれどやめられない」という人たちに対応するもので、この4年間で340人から相談があったそうです。 そういった、加害者側のケアを同時に行っていかなければ、この日本版DBSの効力は十分に発揮されないんじゃないかと思います。また、対象となる範囲も学校や保育園・幼稚園などで義務化ということですが、そこから民間は漏れています。大手の塾や学童サービスは取り入れるでしょうが、個人で行っている家庭教師などは、どこまで浸透するでしょうか。