新年の気配を感じながら訪れたい展示5選。
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ @森美術館
渋谷の忠犬ハチ公像のように、六本木エリアで待ち合わせるときは「六本木ヒルズ」入り口の大きな蜘蛛の彫刻《ママン》で集合。なんて人も多いのではないだろうか。「ハチ」の物語はよく知られているが、クモについてはどうだろう。《ママン》のお膝元、六本木『森美術館』で、その制作者でもあるルイーズ・ブルジョワの、国内では27年ぶりとなる大規模個展が開催中だ。家族との関係性と心の修復を切り口にした3つの章立てから約100点の作品を紹介し、そのキャリアの全貌を知ることができる展覧会だ。身体性、セクシュアリティ、ジェンダーといった主題に基づいた作品群。初期作品から最晩年に至るまで、アーティストの内側から発露される引き裂かれるような感情や記憶を芸術の域まで昇華する、そのあまりに生身な表現の迫力に圧倒される。蜘蛛《ママン》が示す母性は優しく深い愛か、獰猛な捕食者か。生き別れること、見捨てられることを恐れたブルジョワ。人間のアイデンティティは他者と関わる中でしか形成されないと考えた彼女の作品前で、人と待ち合わせ・出会うことの意義深さにもハッとさせられる。 さーて、12月はどんな展示に行こうかな。
インフォメーション
ルイーズ・ブルジョワ展:地獄から帰ってきたところ 言っとくけど、素晴らしかったわ 会場:森美術館 会期:2024年9月25日(水)~2025年1月19日(日) 時間:10:00 ~ 22:00(火曜日は17:00まで)、12月24日(火)・31日(火)は22:00まで 休み:なし 料金:平日/一般2000円、大学生・高校生1400円、65歳以上1700円、中学生以下無料。土・日・休日/一般2200円、大学生・高校生1500円、65歳以上1900円、中学生以下無料※オンラインサイトよりご購入の場合は料金が異なります。※予約優先制です。
黒部市美術館開館30周年『サエボーグ Enchanted Animals』 @黒部市美術館
大谷翔平の偉業「50:50」なんてワードが今年の流行語大賞トップ10にランクインしたそうだが、こちらの「50:50」は半分人間&半分玩具の不完全なサイボーグ・アーティストのこと。ラテックス製のボディースーツを纏うことで自身の身体を拡張させ、家畜等のキャラクターに扮したパフォーマンスを行う作家がサエボーグだ。農場や家という生活世界を舞台に家畜等の役割を演じることで、生きることの関係や構造を開示し投げかけてきた。「Enchanted Animals」(魔法にかかった動物たち)と題された本展では、鑑賞者も家畜に変身。動物たちの耳や尻尾などを身に付けた鑑賞者が、会場に広がる農場世界に誘われる。変身し、演じることによって、無邪気な家畜の生に触れたり、同じ生き物として情を見出したり、あるいは解放された自分自身に出会えるような、舞台的空間が広がる、家畜と鑑賞との「二刀流」の展示にワクワクせざるを得ない。