「ランドセル型のリュック」は悪目立ちしたくないから? 「ラン活」が本格化、親のニーズ反映
入学式のシーズンだ。しかし、来年に入学する小学1年生に向けたランドセル商戦は、すでに始まっている。販売店やメーカーは、子どもの体にかかる負担を減らしたいという親たちの声に応え、「軽さ重視」のラインアップの充実に力を入れている。さらに、これまでとは異なる素材で作られた「ランドセル型のリュック」を扱う店も増えている。 【写真】登山用具の技術を活用したモンベルのランドセルはこちら * * * 東京・高島屋日本橋店のフロアには、約200種類のランドセルがずらり並ぶ。さらにオンラインストアでは、約700種の商品を揃える。 今年の特徴は、さまざまな工夫を凝らして重量の軽減を目指した商品だ。 「今、軽いランドセルのニーズがすごく高まっています。『一番軽いのはどれ?』と来店されるお客様がとても多いので、目立つ位置に軽量の商品を並べています」 と、高島屋のランドセル担当バイヤー、大内優奈さんは説明する。 たとえば、同社がフレンチスタイルの子ども服ブランド「オークレール デュ ラ リュンヌ」とコラボした「おしゃれで軽い通学用リュック」。撥水加工を施したナイロン製で、重さは約980グラムだ。内部のタブレット端末ケースは取り外しが可能で、価格は6万4900円。 一方、「かぶせ」と呼ばれるふたに、耐久性に定評のある人工皮革を使い、主素材にナイロンを採用した高島屋オリジナルの通学用リュックもある。こちらは約880グラムで、価格は5万2800円。 ほかにも真鍮製の金具をプラスチックに変更するなど、さまざまな工夫が施された商品が並んでいるが、いずれも遠目には普通のランドセルに見えるのがポイントだという。 「素材だけでなく、見た目が変わってしまうと、学校で悪目立ちしてしまうのではと心配される保護者の方が多いので、ランドセルと同じような形の商品を揃えています」
■ランドセルで腰痛に 高島屋が、軽量な素材で作った「通学用リュック」を初めて発売したのは2022年。腰の痛みを訴える小さな子どもが増え、ランドセルの重さを気にする保護者が増えてきたのだという。 同年、学校用品を企画販売するフットマーク社が、1200名の小学1~3年生とその保護者を対象に「ランドセルの重さに関する意識調査」を実施。約9割の子どもが「通学時のランドセルが重い」と感じていたことがわかった。 教科書のページ数や副教材が増えただけでなく、タブレット端末、暑い時期は熱中症予防のために水筒も持ち運ぶことになる。 この調査では、登下校時に持っている荷物の平均重量は4.28キロにのぼり、7割の子どもが3キロ以上の荷物を背負っていたことも明らかになった。 子どもに関する消費ビジネスを研究する大正大学の白土健教授は、小さな体で3キロ以上の荷物を背負って通学を続けると、筋肉痛や腰痛など身体的影響に加え、心身の不調を訴える「ランドセル症候群」になってしまうことがあると訴える。 日本鞄協会・ランドセル工業会によると、一般的なランドセルの重量は天然皮革のものが1400グラム前後、人工皮革製は1200グラム前後。それに教科書などを入れると6キロあまりになる。 そのため、「少しでも軽いランドセルがほしい」というニーズが高まっているのだ。 ■リュック型が廃番になった理由 20年以上前からランドセルを手掛けてきた流通大手イオン(千葉市)も、昨年から特に軽さを追求した「ラクルスタイル」シリーズをラインアップに加えた。 従来製品は人工皮革で作られているのに対して、ラクルスタイルは環境に配慮した再生ポリエステルの生地を使用することで1キロ以下の重量を実現した。