「難しい役」でも10分足らずで存在感を発揮 映画「アイミタガイ」の藤間爽子
「アイミタガイ」(草野翔吾監督)は、誰かの思いは巡り巡って誰かを支えているのだということ、つまり、まさに「相身互い」を描いた感動的な人間ドラマだ。藤間爽子(30)の登場時間は10分にも満たないはずだが、全編にわたり確かな存在感を放ち、物語の重要なカギとなる。 【写真】映画「アイミタガイ」のワンシーン 互いに思い合い、助け合うことを意味する「相身互い」。主人公の秋村梓(黒木華)は親友の郷田叶海(藤間)が事故で亡くなった事実を受け入れられずにいる。だが、叶海の周囲の人々が抱くそれぞれの悲しみや慈しみが、やがて梓のもとに届き…。 冒頭で亡くなって、叶海はもういないのだが、叶海へのさまざまな思いが交錯しながら映画は進む。 「難しい役でした。物語の扉を開く役割を担い、その後、周囲の人々が、それぞれの叶海像を語っていきます。ですから冒頭で私が叶海を印象づけるのではなく、日常の中にたたずんでいるように見せたほうがいいのかなと考えました」 1週間に満たない短い撮影だったが、「三重県桑名市で撮影。桑名は初めてでしたが、東京を離れての撮影は雑念から解放され、その作品だけに向き合える。作品に携わっていることが実感できる現場でした」と充実感を語る。 小学生の頃、俳優を目指した。学芸会など人前で演じるのが大好きで、「日本舞踊のできる俳優を目指す」と作文に書いたこともあった。 日本舞踊紫派藤間流の家元、三代目藤間紫でもあるのだ。初世藤間紫も俳優として名を成したが、「舞踊は自分の家がそうで、そういう星のもとに生まれたわけですが、俳優はゼロの状態から自分でやりたいと望んだものです」という。 「人前で何かを表現するという点においては、両者は別のものではない。自然ななりゆきだったのかもしれません」 だが、両立は忙しい。撮影が入れば、稽古の時間がなくなり舞踊は休まざるを得ない。一方、俳優の仕事も無我夢中だった頃に比べ、「少し臆病になっているのかも」と悩むこともある。 「でも、やりたいことが2つあるのは、ありがたいこと。頑張らないといけない」と気持ちを切り替える。