女子高校生がピストルと向き合う理由 京都府唯一の選手「無課金おじさん」のあの競技
園部高(京都府南丹市)にある射撃場。銃を構え姿勢を正す。静寂の後、エアピストルから放たれた弾が破裂音とともに的を射抜いた。 「集中力が求められる。自分と向き合えるところが好き」。エアピストル競技で府内唯一の高校生選手、森島佐和さん(18)は話す。 重さ1キロ弱の銃を片手で構え、10メートル先にある直径15・55センチの的を狙う。中心の10点は直径1・15センチしかない。 的を外すと気持ちが揺れる時もある。構えがぶれないように平常心を保ち続けることが大事な技術となる。 ピストル競技には、弾ではなく光線を放つ専用機器を使う「ビーム」と、空気圧で弾を実際に発射する「エア」がある。エアは1時間15分の間に60発の精度を競う。 府内高校生では唯一のエアピストル競技者。全国でも女子高生は20人弱しかいない。 日本は銃規制が厳しく、エアピストル所持者は500人の競技者しか許されていない。移動も専用ケースに入れ、目立たないようにするなど注意がいる。ビームで結果を残し、協会からの推薦がないと始められないなど高いハードルがある。 園部高付属中の時、高校射撃部が表彰されるのを見て「初めてのことにトライしたい」と入部した。ビームピストルを続け、高3の今夏、指導者の薦めでエアに挑み始めた。 「反発力があるので、動かずに撃つことが難しい」。体幹と筋力を鍛え、腕を上げた。7月に広島であった全国高校生スポーツ射撃競技選手権で、エア5位に入った。 9月には大学生が大半のジュニアオリンピック(9月・埼玉)で13位と健闘した。 今は大学受験を目指す傍ら、自宅で構えの練習を続けている。 世界ではエアの競技人口は多い。パリ五輪では他選手に比べ装備が少ないトルコ人選手が「無課金おじさん」として話題を集めた。 ただ、日本ではまだマイナースポーツ。それだけに「大学ではメダルを取って、もっとみんなにエアピストルを知ってもらいたい」。これからも的と自分に向き合い続ける。