萩本欽一、スターダムを駆け上がったその人生 表情の似た伊藤淳史が演じる意味とは
8月31日から9月1日にかけて日本テレビ系で放送される『24時間テレビ47』内で、スペシャルドラマ『欽ちゃんのスミちゃん ~萩本欽一を愛した女性~』が放送される。 【写真】場面カット(複数あり) 本作は、日本のエンターテインメント史上に功績を残した萩本欽一と、世間をあっと言わせるドラマチックななれそめで結婚した女性・澄子の、半世紀に渡る、不器用だけど心に迫る愛の物語。萩本欽一役を伊藤淳史、欽一の妻役・澄子を波瑠が演じる。 萩本は、坂上二郎と結成したコント55号で一世を風靡したコメディアンだ。テレビ司会者としても知られており、『欽ちゃんのドンとやってみよう!』(フジテレビ系)や現在も『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』として続いている『欽ちゃんの爆笑仮装コンテスト 全日本仮装大賞』(日本テレビ系)のような名前を冠したレギュラー番組を多数持っていた。それらは軒並み高視聴率を記録し、特に1980年代に放送されていた冠3番組の視聴率の合計数字から「100%男」と謳われていたこともあった。 コメディアンとしては、「なんでそーなるの!」「どっちらけ」「バンザーイなしよ」など今でも語り継がれるギャグが残っており、さらに「欽ちゃん走り」といわれる独特の走り方など体を使った笑いでも知られている。 その一方で萩本には、人の才能を見抜く力があった。現在もテレビドラマやバラエティ番組で活躍する関根勤や柳葉敏郎は、萩本の番組や舞台をきっかけに活躍の場を広げている。また、ラジオ番組『欽ちゃんのドーンといってみよう!!』(ニッポン放送)では、4人の大学生をスカウトし、「パジャマ党」と呼ばれる構成作家集団を結成。彼らは後に『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)の構成などを担当した。柳葉が出演した『踊る大捜査線』(フジテレビ系)の脚本を手がけた君塚良一もこの「パジャマ党」の出身である。 萩本自身は俳優活動はあまり行わなかったが、1996年に放送されたNHK連続テレビ小説『ひまわり』では、ナレーションを担当し、獣医師役で出演も果たした。それ以外にヒロインののぞみ(松嶋菜々子)の実家で飼われている犬・リキの声も担当したというところが萩本らしいところである。 こんな輝かしい実績とお笑い界への功績を持っている萩本だが、極度のあがり症などが影響して駆け出しの頃は苦労したそう。そんな“売れる前”からの知り合いだった澄子について、萩本はあるインタビューで「ある時、アパートに帰ったら部屋にテレビがあってね」「スミちゃんにそれとなく聞いてみたら、『ああ、これからはテレビの時代だから、ちゃんと観ておかないとテレビの世界には行けないよ。だから置いといただけよ』って」というエピソードを明かしている。(※)もしかしたら大スター“欽ちゃん”の才能を最初に見抜いた人こそ、澄子なのかもしれない。 『欽ちゃんのスミちゃん ~萩本欽一を愛した女性~』で萩本を演じる伊藤が得意としているキャラクターは、『チーム・バチスタ』シリーズ(カンテレ・フジテレビ系)の田口公平役や、『離婚しない男―サレ夫と悪嫁の騙し愛―』(テレビ朝日系)の岡谷渉役のような、心根が優しいがゆえに周りに振り回されたり、騙されたりしてしまう比較的“弱い”タイプだ。だが、彼らは弱いからといって“やられっぱなし”なわけではない。いつも現状を打破しようと立ち上がり、前を向いて進んでいく。伊藤は不安や弱さを抱えながらも、あるところから奮起する人間の強さを丁寧に演じることができるのだ。 きっと、本作でも“スミちゃん”を心の支えにしながらスターダムを駆け上がっていく萩本を見事に表現してくれることだろう。偉大な、しかも存命の人物を演じることは難しさもあっただろうが、萩本本人に少し似ているようにも感じる、伊藤の少し照れたような笑顔が見られることを期待している。 参考 ※ https://ddnavi.com/interview/1154905/a/
久保田ひかる