ロシア軍がウクライナで初めて米供与のパトリオットを破壊、同時に米軍に犠牲者が出た?
<パトリオット2基を破壊して、そこにいた米軍兵士も死んだ、というロシアの主張はどこまで本当なのか。もしロシア軍にパトリオットを破壊することができるのなら、ウクライナは防空も危うい>
アメリカがウクライナに供与した対空防衛システム「パトリオット」がロシア軍の空爆を受け、米軍兵士が死亡した──ロシアの国営メディアが、ロシア下院議員の発言として報道した。【ブレンダン・コール】 【動画】ウクライナのパトリオット2基をロシア軍のミサイルが攻撃したとする映像 米国防総省の報道官は、この主張に対する反応を聞かれ、「その戦闘には米軍からは誰も参加していないので、アメリカ人の負傷者はいないと断言できる」と本誌に述べた。 一方、ロシアが占拠しているクリミアから選出されたロシアのミハイル・シェレメト下院議員は、ロシアの国営通信社RIAノーボスチに対して、ロシア軍はドネツク州でパトリオット防空システム2基を攻撃したと述べた。 「対空防衛システム『パトリオット』が破壊された際に、米軍兵士たちも殺された可能性がある」と、シェレメトは語った。 だが、複数のソーシャルメディアユーザーは、破壊されたと報じられているのは、1基4億ドル(約590億円)とされるパトリオットのシステム全体ではなく、パトリオットの発射機2つだという点を強調している。こちらの価格は、1つあたり1000万ドル(約14億8000万円)だ。
■本当は米兵がいる
RIAノーボスチによるとシェレメトは、パトリオットシステムは技術的に使いこなすのが難しいため、「アメリカ軍の専門家たちがひそかにウクライナに派遣され、運用している可能性がある」と述べた。 実際は米軍の兵士がウクライナの戦場に派遣されているとシェレメトは主張するが、アメリカは努めてこの戦争に直接関与しない立場だ。本誌で独自に確認することはできなかった。 シェレメトの発言の前にも、テレグラムなどのロシア語メディアでは、3月9日にドネツク州のポクロウシク地区で、ロシアの短距離弾道ミサイル「イスカンデル」による攻撃があったとの臆測が広まっていた。 ロシア国防省は、ミサイル着弾の瞬間を捉えたとする動画を公開し、その標的は当初、S-300ミサイルシステムだとしていた。 だが、ロシアとウクライナ双方のメディアは、「パトリオットの発射機とみられるもの2つが爆発し、現場にいた要員たちはほぼ間違いなく死亡した」とするフォーブス誌の記事を引用して伝えている。この記事によれば、その前にも、「数百マイル離れたところから発射された可能性がある、ウクライナ軍の車列を直撃する攻撃」があったとのことだ。 フォーブス誌の記事によれば、アメリカが供与した対空防衛システムにロシア軍が一部でも攻撃を加えることができた事例は、今回の戦争でこれが初めてだという。
■全パトリオットの13%を喪失?
パトリオットがウクライナに到着したのは2023年4月だ。航空機のほか、ロシアが発射した巡航ミサイルや短距離弾道ミサイルを迎撃するその性能は、ロシアの空からの攻撃に対して強力な盾をもたらした。 パトリオットの移動式発射機は、付随するレーダー装置や管制車両、ミサイル再装填装置と共に稼働する。そしてこのシステムは、この数週間で少なくとも十数機のロシア空軍の戦闘爆撃機を撃墜したとされている。 フォーブス誌によれば、今回の件が事実と確認された場合、「たった1度の攻撃で、ウクライナ軍は保有するすべてのパトリオット発射機の最大13%を失った可能性がある」という。 (翻訳:ガリレオ)
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