【会社設立】自分で登記申請した場合の「よくあるトラブル」とその回避策【司法書士が解説】
会社設立を自分の手で進めることは、費用を抑えながらプロセス全体を把握できる魅力的な選択肢です。しかし、法律的な知識や手続きの正確さが求められるため、ミスやトラブルが発生しやすいという事実も見逃せません。見様見真似で会社設立を行った場合、どのようなトラブルが起こりうるのでしょうか。よくあるトラブル事例とともに、回避策を見ていきましょう。加陽麻里布氏(司法書士法人永田町事務所 代表)が解説します。
1. 定款に不備があった場合のトラブル
事例:ある起業家が見本を参考にして定款を作成したものの、事業目的の記載が不適切であったため必要な許認可が取得できず、事業開始が大幅に遅れた。 原因:事業目的が曖昧すぎた、あるいは具体性を欠いていたなど ⇒特に建設業や飲食業など許認可が必要な業種では、事業目的の記載が適切でないと審査で弾かれます。 〈回避策〉 ・必要な許認可がある場合、その業種特有の文言を正確に記載する。 ・公証役場や専門家に定款の内容を事前確認してもらう。
2. 出資金払込の記録不備による申請却下
事例:発起人の友人名義の口座を使って出資金を振り込んだ結果、法務局で登記申請が受理されなかった。 原因:友人名義の口座を使ったこと ⇒出資金は発起人自身の口座に振り込む必要があります。他人名義の口座や法人名義の口座を利用すると、資本金の払込証明が認められません。 〈回避策〉 ・必ず発起人名義の個人口座を使用し、通帳の該当ページを正確にコピーする。 ・払込証明書の作成例を参考にして正しい形式で準備。
3. 商号(会社名)のトラブル
事例:設立後、他社が商号をすでに使用していることが判明し、商標侵害で訴えられた。結果として会社名の変更を余儀なくされ、多額の費用と時間がかかった。 原因:商号調査が不十分だった 〈回避策〉 ・事前に商号調査を行い、商標権や商号権の登録状況を確認する。 ・特に広範な事業展開を予定している場合は、商標登録を視野に入れる。
4. 登記書類の整合性不足
事例:登記申請書、定款、払込証明書の記載内容が一致しておらず、申請が受理されなかった。結果、手続きが大幅に遅延し、事業開始がずれ込んだ。 原因:書類作成時に細やかな確認を怠ったこと ⇒例えば、会社名や資本金の金額が書類間で異なっている場合があります。 〈回避策〉 ・すべての書類の記載内容が一致していることを複数回確認する。 ・法務局の窓口で事前相談を行い、書類の不備を指摘してもらう。