なぜジュビロはJ1自動昇格を勝ち取れたのか? 指揮官のブレない信念、最終節に凝縮された“どんな状況でもベストを尽くす”
開幕戦は岡山に2-3敗戦
「まずは選手のストロングを活かしてあげたい」 最初にコンセプトを訊くと、ジュビロ磐田の横内昭展監督はそう語った。それは同時に、戦術で個性を殺したくないという思いも含まれている。 【動画】感極まる場面も...横内監督のインタビュー もちろん試合に勝つために、チームの戦術的な約束事はある。それでもベースは個人というのが、横内監督がチーム立ち上げから強調してきたことだった。ではチームとしてはどういうサッカーがしたいのか。 「チーム全員で、とにかく試合に関わりたいという。とにかくボールに関わって、フォワードであろうがゴールキーパーであろうが、守備だろうが攻撃だろうが、どこにボールがあっても、みんなが常に関わっているサッカーをやりたい。そういうサッカーをやれれば、しっかりクリエイティブなコンビネーションだったり、そういうのが生み出されるんじゃないか」 藤田俊哉SDはボールを大事にして、自分たちで攻撃を組み立てるアクションサッカーを基本コンセプトとして、日本代表のコーチとして森保ジャパンを支えてきた横内監督に、ジュビロの現場を託すことを決断した。ただし、指揮官のアプローチはシステムや戦術の形から入るものではなく、まず個を磨くというもの。 “ラッソ”ことFWファビアン・ゴンザレスの加入に関連する問題で、FIFAから2023シーズンの補強禁止処分が下され、エース候補でもあったラッソも5月の上旬まで出場停止という厳しい状況だった。 なんとか現有メンバーを引き留めて、パリ五輪代表候補のDF鈴木海音など、4人の選手をレンタルバックした。横内監督は遠藤保仁など、ベテラン選手の経験を頼りにしつつ、試合を重ねながらチーム力を引き上げるミッションに挑むこととなった。 チームの立ち上げから鹿児島キャンプと進めていくなかで、練習試合でもJ2でライバルとなる大分トリニータや清水エスパルスに敗れて、内容的にもかなり劣勢だった。しかし、横内監督はブレることなく個人のデュエルや球際で負けないことをベースにしながら、徐々にチームとしての守備やビルドアップ、コンビネーションも入れていくことで、個人とチームを並行して高めてきた。 もちろん、シーズンはチームの成長を待ってはくれない。2月18日の開幕戦ではファジアーノ岡山に2-3で敗れた。終盤に当時17歳だった高校生Jリーガーの後藤啓介が2ゴールを決めて衝撃のデビューとなったが、それまで0-3という点差そのままの内容で、かなり厳しい船出となった。
【関連記事】
- 「走れない闘えない努力もしない口先だけは立派な史上最低イレブン」刺激的な横断幕と大ブーイング。異様な雰囲気に包まれた大宮アルディージャの最終戦セレモニー
- J1自動昇格を逃した清水。17位水戸になぜ勝てなかったのか。選手たちが語る苦戦の理由「距離感も悪かった」「先に仕留める力が必要だった」
- 「実力がなかったとしか言いようがない」J1自動昇格ならず...清水FW乾貴士が痛恨の極み。POに向けては「ちょっと今は考えられない」
- オフサイド? オンサイド? ヴィッセル大迫勇也の決勝弾が議論呼ぶ。「ラインから出てるように見える」「蹴った瞬間にどうだったか」などの声
- 浦和×神戸の最終盤で何が起こったのか?スコルジャ監督が頭を抱えたGK西川の攻め上がり→大迫が無人のゴールへ流し込んだ決勝弾の裏側