三重・松阪の一色さんが日本画部賞 全国公募「創造展」 きょうから〝遺作展〟
喜び一転、28日に交通事故で逝去 受賞作、市文化財センターで
三重県松阪市西黒部町で28日、絵画の荷下ろし作業中に交通事故に遭い、77歳で他界した同町の日本画講師・一色信彦さんが、21~27日に東京都美術館で開催された第77回創造展(創造美術協会主催)の日本画部門で日本画部賞を受賞した。また松阪地区からは同部門で奥田正治さん(75)=西黒部町と、中村洋さん(48)=駅部田町=の2人が準会員に推挙された。同展での入賞、入選作はきょう31日から6月2日まで、外五曲町の市文化財センターで開く作品展で、一色さんが生前講師を務めていた西黒部日本画教室の生徒らの作品と一緒に展示される。
一色さんは26歳の時、日丘町の故・奥山芳泉さんに師事。近鉄に勤務しながら創作し、市展で市長賞を3回、県展では1992(平成4)年の最優秀賞をはじめ、優秀賞、岡田文化財団賞を受賞した。退職後は西黒部公民館などで教えていた。 全国公募展・創造展の日本画部門では、2017(同29)年に初応募で最優秀新人賞を受賞。新型コロナで中止された2年間を除き、毎年入賞や入選を続け、22(令和4)年に異例の早さで松阪地区から初めての会員になった。 一色さんは27日の本紙取材で、入賞作「涼」(F50)について、「明和町を流れる祓川の柳をモチーフにし、重厚感ある幹に垂れ下がる枝と細長い葉一枚一枚を何度も重ね塗りし、風に揺られる様子を表現した。特に背景のきらきらと光輝いて流れる川は、波を描くことで表した」と語っていた。 また今回3年ぶりの入賞については「さらに挑戦したいという思いが強くなった。次はもう少し大きな作品で上の賞を狙いたい」と次作に意欲を見せた直後の訃報だった。
「先生の思い引き継ぐ」 準会員推挙の奥田さんと中村さん 教室生の作品なども展示
今回の作品展は、一色さんが創造展に合わせ教室の生徒たちの作品を披露する機会になればと、亡くなる直前まで準備を進めていた。その思いを教室の奥田正治代表らが引き継いで開催する。 会場には一色さんの入賞作をはじめ、今回準会員推挙・奥田代表の「参拝」(F50)と中村さんの「勿忘―ワスレナ―」(同)の他、県内の創造展入賞入選者の作品と、教室の生徒たちが各公募展に向けて制作、出展した50~100号の大作、新メンバーが教室で普段描いている小作品など計25点が展示されている。
学生時代、故・奥山さんの元で一色さんと共に学び、教室では一色さんを支えた中村さんは「いつも無茶振りしていろいろなことをやらされましたが、それも良い思い出です」、教室の世話役として一色さんを支えた奥田代表は「今回の展示を楽しみに準備していた先生の思いを引き継いで開催させていただきました。ぜひ作品を見てもらい在りし日の先生をしのんでもらえたら」と話している。 開場は午前10時から午後4時(最終日は同3時)まで。