<インド・ブッダガヤ>悟りへの道 ── 高橋邦典フォト・ジャーナル
洞窟での断食によって骨と皮ばかりになりながらも悟りを開けなかった仏陀は、極端な苦行からは真理は得られないと気づき、前正覚山を降りる。ナイランジャナ川で沐浴し体を清め、乳粥を食べ精気をとり戻した後、彼は川を渡って菩提樹の下で瞑想にはいったのだった。 仏陀が川のどの辺りを歩いたのかは定かではないが、概念的にでも、その足取りを撮っておこうと思った。 乾季には水量がかなり減るので、川岸の草が伸び、むき出しになる。水の残る場所でも川底が浅いので、色々な場所から向こう岸へ渡ることができるようだ。 僕はスポットを決め、菩提樹のあるマハボディ寺を背景に、川を渡り行き来する人の姿を待ち続けた。 2000年以上も昔、この土地で真理を求め続けた仏陀は、一体どんなことを胸に秘めこの道無き道を歩んでいったのだろう? ふとそんなことが頭をよぎったが、僕如きの浅知恵では、想像することさえ叶わなかった。 (2014年11月) ---------------- 高橋邦典 フォトジャーナリスト 宮城県仙台市生まれ。1990年に渡米。米新聞社でフォトグラファーとして勤務後、2009年よりフリーランスとしてインドに拠点を移す。アフガニスタン、イラク、リベリア、リビアなどの紛争地を取材。著書に「ぼくの見た戦争_2003年イラク」、「『あの日』のこと」(いずれもポプラ社)、「フレームズ・オブ・ライフ」(長崎出版)などがある。ワールド・プレス・フォト、POYiをはじめとして、受賞多数。 Copyright (C) Kuni Takahashi. All Rights Reserved.