「マカオのカジノ王」の息子が創業したeスポーツ企業、米国でIPOを申請
伝説的なマカオのカジノ王、故スタンレー・ホーの息子マリオ・ホーが共同創業したeスポーツ会社のNIP Group(NIPグループ)はこのほど、米ナスダックでの新規株式公開(IPO)を申請した。 『マインクラフト』や『キャンディークラッシュ』といった人気のゲームを生み出したスウェーデンに本社を置くNIP Groupは6月12日に米証券取引委員会(SEC)に書類を提出したが、その中ではIPOの詳細について明らかにしていない。 目論見書によると、2021年に法人化された同社は中国、欧州、ブラジル出身のプロゲーマー125人を擁し、eスポーツの2チームを運営している。チームは中国のEStar Gaming(Eスター・ゲーミング)とスウェーデンのNinjas in Pyjamas(ニンジャズ・イン・パジャマズ)だ。Ninjas in Pyjamasは『カウンターストライク:グローバルオフェンシブ』『オナー・オブ・キングス』『リーグ・オブ・レジェンド』といった人気のゲームで競っている。2023年までにEStar Gamingは60の大会で賞金1090万ドル(約17億円)、Ninjas in Pyjamasは57の大会で賞金820万ドル(約13億円)を獲得していると目論見書にはある。 NIP Groupには、スウェーデンのメディア・通信業界の大物、故ヤン・ステンベックの息子フェリックス・グラナンダーや中国・武漢市、米国の富豪ジェフ・ヤスの投資ファンドのSusquehanna International Group(サスケハナ・インターナショナル・グループ)、フォーブスの投資家ランキングに入っているアンナ・ファンのベンチャー・キャピタルのZhenFund(真格基金)、香港のポップシンガーのジャクソン・ワンらが投資している。
マカオeスポーツ連盟の会長も務めるマリオ・ホー
NIP Groupの2023年の純損失は800万ドル(約13億円)で、前年の610万ドル(約10億円)から拡大した。売上高は前年比27%増の8370万ドル(約130億円)だった。同社はタレントマネジメントやeスポーツチームの運営(大会参加の手当やスポンサーシップを含む)、イベント企画で売上をあげている。 同社によると、東南アジアや北米、中東、日本、韓国など新市場への進出を計画しているという。加えて、eスポーツ教育やデジタルコレクティブル、知的財産のライセンス供与などの分野への事業拡大を視野に入れている。共同で最高経営責任者(CEO)を務める共同創業者のマリオ・ホーとヒシャム・シャヒーンは目論見書の中で「急成長しているこの業界を育み、将来と若者のための可能性を見出すべく、業界の流れに影響を与えたい」と述べている。 調査会社Niko Partners(ニコ・パートナーズ)の最新の報告書によると、世界のeスポーツ市場規模は2022年に13億ドル(約2050億円)に達し、アジアと中東・北アフリカが56%超を占めている。eスポーツの大会の人気は高まっており、視聴者数は2022年の5億3200万人から2025年には6億4000万人以上に増えると予想されることが昨年9月のBoston Consulting Group(ボストン・コンサルティング・グループ)の調査で明らかになった。 米マサチューセッツ工科大学で財務を専攻したマリオ・ホーは、23歳だった2018年に中国・深センでNIP Groupの前身の1つであるVictory 5(ビクトリー5)を創業してeスポーツ分野に足を踏み入れた。その2年後に98歳で他界したアジア最大のギャンブル帝国の創始者スタンレー・ホーの息子であるマリオは、マカオeスポーツ連盟の会長も務めている。
Zinnia Lee