神奈川でシニアの労災が増加 「またか」、2カ月に1回発生の現場も 人手不足で頼りも「自己流」や「慣れ」
県内でシニアの労働災害(労災)が目立っている。運動機能や認知能力の衰えが要因とされるが、深刻化する人手不足下で高齢の働き手に頼らざるを得ないのが実態だ。現場を訪ねた。 県内のリサイクル業者。産業廃棄物の保管所で、年配の男性がアルミ缶の仕分けを黙々と続けていた。仕分けに使うカッターで手を切ったり、圧縮加工した鉄くずにぶつかったりと、負傷する同僚が続出している。「高齢従業員の事故は2カ月に1回は発生している。またか、と感じる」。代表は頭を抱える。 同社の全従業員は100人弱で、約3分の1が60歳以上だ。運動機能や認知能力の衰えに起因しているだけでなく、安全用具を正しく着用しないといった「自己流」や「慣れ」が事故を招いている傾向もあるという。 本来は若手人材を雇用したいが、廃品処理は「不人気の仕事」(代表)で、大型車の運転免許やクレーン作業の資格が必要な事情もある。代表は「機器の取り扱いに慣れ、資格を保有している高齢者に頼らざるを得ない」とこぼす。 厚生労働省神奈川労働局がまとめた2023年の労災による死傷者(休業4日以上)は8002人となり、30年ぶりに8千人を超えた。押し上げているのは、過半を占めた50歳以上だ。原因は転倒や無理な動作が目立ち、24年は23年を上回る勢いという。
神奈川新聞社