藤ヶ谷太輔&奈緒「密なやりとりでお互いの理解が深まった」辻村深月のベストセラーに挑む
撮影前の密なディスカッションのおかげでお互いへの理解が深まりました
主演のおふたりも大ファンという人気作家、辻村深月さんの2023年最大のベストセラー小説『傲慢と善良』が、待望の映画化。 【写真22枚】マッチングアプリをきっかけに出会った男女の「一生に一度の選択」を繊細に描いたストーリー 架(かける)を演じる藤ヶ谷太輔さんと、真実を演じる奈緒さんに、作品や撮影時のエピソード、婚活に対するイメージなど、たっぷりとお話しを聞いてきました。 〈全2回の前編/後編は記事下のリンクからご覧いただけます〉 ---------- ─────藤ヶ谷さんは「人生で一番好きな小説」、奈緒さんは「辻村作品に出演するのが夢」とおっしゃるくらい原作の大ファンとのことで、今回念願の作品への出演だと思いますが、撮影に入る前に準備したことはありますか? 藤ヶ谷さん(以下敬称略):まず原作を2回ほど読み返しました。あと監督がいちばん最初にじっくり話す時間を作ってくださって、3時間弱くらいかな?作品や脚本について話しましたね。 そのとき携帯でメモを取るのもな…と思って、少し迷ったんですけど、約5年前に自分で買った『傲慢と善良』の小説の本に直接書き込みました。大好きな本にメモを取るのを最初は躊躇したんですが、新しいものを買えばいいし、これも運命だな…!と思って。 ─────撮影に入られる前から、密にディスカッションされていたんですね。 奈緒さん(以下敬称略):そうですね、監督も含めた3人のグループLINEも作りました。 藤ヶ谷:3人でごはんも食べに行ったよね。 奈緒:事前に相談したいこともあったので、撮影前に同じ方向を向くための擦り合わせができてよかったです。特にタイトルにもあるように、“傲慢さ”と“善良さ”については、キーワードとして深く話し合った気がします。 藤ヶ谷:お互い台本を読んでいるときに、少しでも気になったことがあれば、すぐグループLINEで相談したりしてましたね。そのときに読んだ感じと、次の日に読んだ感じが違うことがあるんですよ。 だからそれを溜めずに言ってみて、そうすると奈緒ちゃんが「私はこう思います」と別視点の意見をくれるので、次はその考え方で読んでみようって、視野を広く持てました。 奈緒:私はもう、架の心情はもちろん藤谷さんにすべて託して、ディスカッションをしてる中で“分からない”ということがあってもいいなと思ったんです。 それが架と真実のすれ違いにリンクすることになるんじゃないかなと。監督も含めて、自分の中にないものや新しい気づきを、ざっくばらんに話し合えたのは楽しかったですね。 藤ヶ谷:普段はなかなかしないやり方だったよね。 奈緒:この作品にはすごく必要なことだったなと思います。 ─────撮影開始時には、スッと役柄に入れている感じでしたか? 奈緒:お互いをよく理解した状態で入れたかなと思います。それでも、現場でないとわからないこともあるし、今作は繊細な描写がとても多いので、そこを見え方としてどういう風に効果的に作用できるか、心理的な表現など、いろんな角度からの話し合いが何も気を使わずにできた現場でした。 藤ヶ谷:そうだね。それこそラストシーンの演出は事前に決まってなかったじゃない? 奈緒:そうそう! 藤ヶ谷:ラストシーンに関しては、やってみた感じで方向性を決めていったんですが、今作の現場は辻村さんの作品が好きな人たちが集まったチームだったので、愛が強いがゆえにこだわりもすごくて。確か前々日にリハしたんだよね。 奈緒:そう、お願いしたんですよ。ラストシーンは、監督の演出として綺麗にっていうよりも、ふたりのカッコ悪さみたいなところも見せたいという思いがあって。 そうなると手法として当日にぶっつけ本番っていうのもあるんですけど、個人的には外での撮影で夕日をバックに撮るシーンだったので、前日でもいいのでリハーサルをやって、みんなの中でこの方向性にしようっていうのが決まった上で、思い切りやりたい!ってお願いしました。 リハと言っても方向性を探すものだったので、照明部さんや録音部さんはホテルに戻っていていいですよって状況だったんですが、結局スタッフさんほぼ全員、総動員でやってくださって…。みんなに見守られながら方向性を固めることができました。 藤ヶ谷:監督や演者だけじゃなく、それぞれにこういうラストシーンがいいんじゃないか、こういう風に撮った方がいいんじゃないかっていう思いがあったので、あの田舎の駅でかなりの大人数で…白熱したなぁ(笑)。 奈緒:青春を感じる時間でしたよね。 藤ヶ谷:みんなの熱量がすごくて、それだけこの作品への愛を感じました。 ◆ラストシーンの撮影前にはみんなで道の駅でまったりする時間も ─────ラストシーンは時間をかけて撮られたんですか? 藤ヶ谷:余裕を持ってスケジュールを取っていたこともあって、撮影前に2時間くらい空き時間ができたんです。みんなで歩いて道の駅に行って、ソフトクリームを食べたり、お土産買ったり。 奈緒:楽しかった~。監督さんは牡蠣小屋に行って、ひとりで牡蠣食べてました(笑)。 藤ヶ谷:とはいえ夕日は沈むのが早いから、結局急げ急げ!って。 奈緒:すごい集中力だったね。 藤ヶ谷:もし撮影前に夕日が沈んじゃってたら、全員が「やべえ道の駅行くんじゃなかった!」ってなるところだったなって(笑)。 ─────グッと集中して撮られたんですね。 藤ヶ谷:はい。そのときにしか撮れないものが撮れたなと思います。 奈緒:力のあるラストシーンになった手応えはありますね。 ─────ご自身が演じられた役柄の印象や好きなところは? 藤ヶ谷:人柄がよくて、つきあいやすい人だなと思います。もし架が近くにいたら、普通に友達として仲良くなっていたかも。 ただ架は、周りの女友達から「昔からモテてた」とか「あんな子でいいの?」みたいなことを言われるからか、ちょっと芸能人ぽいっていうか…。こう見られてるんだから、こうなりなさいっていう環境にいると、周りの影響によって人格が作られていってしまうのかも、という印象も抱きましたね。 奈緒:演じる以上は真実のことをとにかく肯定して、自分でジャッジするのはやめようと思いながら、役と向き合いました。なんでそういう考えに至って、なんでそういう行動をしたんだろう、と。 真実の心情を理解したいという思いがいちばん強かったですね。役にとって、自分がいちばんの理解者であり、親友みたいになれたらいいなっていうのは、どの作品でも心がけています。 ----------- 主演のおふたりや監督だけではなく、映画に関わったすべての方の、原作への愛とリスペクトが感じられる作品。インタビュー後編では、今作のテーマにもなっている婚活やマッチングアプリに関するお話も伺っています! 下のリンクからぜひチェックしてくださいね。