なぜ樺太放棄した? 面積だけでは測れない「樺太千島交換条約」の真意
地政学上重要だった千島列島の領有
新政府にとり、財政力でも防衛力でも広大な樺太を統括する力がなかったとはいえ、面積的に見れば7万6400平方キロメートルある樺太を放棄し、総面積1万数千平方キロメートルしかない千島列島との交換は割に合わないようにみえます。 しかし、ロシアの海洋進出を警戒していた英国政府のアドバイスもあり、地政学上、オホーツク海と太平洋を分ける千島列島は海洋戦略上、重要な地点という認識を、明治政府が持っていたとみられます。また千島列島は南北に約1200キロの長さがあり、水産業にとっては大きな意味を持ちました。 また、「樺太千島交換条約」の文面をみると、日本に譲渡されるウルップ島以北の18島の名称はありますが、択捉・国後・色丹・歯舞の北方四島は含まれていません。既に先の「日魯通好条約」で択捉島以南が日本領であるということが両国間で明確に認識されていたようです。