米国が「イスラム国」空爆 イラクで何が起こっているのか?
米軍空爆でクルド人部隊を「支援」
クルド人の部隊は現地の言葉でペシュメルガと呼ばれます。「死に向かう者」という意味です。文字通りに死を恐れない勇猛さで知られています。だが大した兵器は持っていません。ところがイスラム国は、モスルなどを攻略した際にイラク中央政府軍の最新の兵器を入手しました。アメリカが供与したものです。したがって装備の面でクルド側が劣勢に立っています。アメリカ軍の爆撃は、装備面でのギャップをペシュメルガのために埋める役割を果たすでしょう。また山岳部で孤立しているヤジード教徒へ食糧や水をパラシュートで落とすなどの緊急支援をアメリカ空軍機が行っています。 アメリカ国内では再度イラクの泥沼に引き込まれるのではないかとの懸念があります。しかしオバマ政権は陸軍を送り込む計画はもっていません。限定的な介入で北部のクルディスターン自治政府をアメリカは守る決意です。だが問題があります。イラクからの分離的な傾向を強めているクルド人を支援することは、国家の分裂を助長しかねないからです。オバマ政権のイラク政策は微妙な局面に差し掛かっています。 (高橋和夫・放送大学教授)