インフルと同じ5類といっても…薬局の請求は28000円「これほど高いとは」 新型コロナ「第11波」、抗ウイルス薬処方に医師もためらい?
新型コロナウイルス感染症の流行が「第11波」に入ったとされる。鹿児島県内の22~28日の1定点医療機関当たりの感染者報告は22.96人。全国最多となった2週前からは減少傾向とはいえ、高止まりの状態だ。一方、今年3月に抗ウイルス薬代など医療費の公費支援が終了し、自己負担が増えている。関係者からは「薬が高価で、医師や患者が使用をためらうのでは」と懸念する声も聞かれる。 患者急増やスタッフ感染で「すでに逼迫状態」の声も…新型コロナが急拡大、医療現場に募る危機感 鹿児島県内
「薬局で値段を見て驚いた」と話すのは、種子島に住む30代男性。6月末にコロナに感染し、地元の病院を受診した。薬局で約2万8000円を請求され、慌てて現金預払機(ATM)に走った。医師に「コロナの薬を処方する」と言われて了承したが、価格などの説明はなかった。「血液検査で炎症を示す数値が高かったから出されたのだろう。自己負担が増えると知ってはいたが、これほど高いとは。受診を控える人も出てくるのではないか」 男性が処方されたのは、米メルク社のラゲブリオ。医療機関で出される新型コロナの抗ウイルス薬の一つだ。他に米ファイザーのパキロビッド、塩野義製薬のゾコーバがあり、それぞれ5日分の自己負担額は3割負担で約3万円、約1万5000円になる。 処方されるのは、高齢者や基礎疾患のある人など重症化リスクの高い人が多い。県薬剤師会薬事情報センターの井上彰夫所長(42)は「患者目線に立つと安価とはいえないが、開発にかかる費用と時間を考えると仕方がない」としつつ、「高すぎて薬を使うべき患者が購入できない可能性もある」と心配する。
県内科医会の有村公良会長が院長を務める大勝病院(鹿児島市)は、軽症者にはのど薬や解熱鎮痛剤を症状に合わせ処方。重症化リスクのある患者には診察時に抗ウイルス薬の特性や価格を説明し理解を得る。有村会長は「高価な薬は医師もためらうこともあるのでは。公費支援があれば患者負担も減らせ、医師も処方しやすくなる」と話す。 抗ウイルス薬は症状の早期改善や後遺症の軽減に加え、ウイルス量を減らし周囲への広がりを防ぐ効果がある。感染症に詳しい鹿児島大学大学院の西順一郎教授は「服用は自分のためはもちろん、流行の抑制にもつながる。医師に使用を相談してほしい」と語る。
南日本新聞 | 鹿児島